シンボル

休眠預金活用事業
情報公開サイト

ホーム検索結果

サムネイル

終了

事業完了報告

2024/08/27更新

事業概要

事業期間開始日 2023/08/01終了日 2024/02/29
対象地域全国
事業対象者

受益者:18~39歳の性風俗従事者(主にキャスト)、元従事者、性風俗で働くことを検討している人、パパ活・個人売春を行っている人(未成年含む)

事業対象者人数

LINE公式の友だち登録1000人(相談につながる機会を得た実数)
相談対応した受益者のべ250人 

事業概要

性風俗は「楽して高収入を得られる仕事」というイメージがあるが、高収入層は限定的で、大半の女性は、毎月の生活費や学費、子どもの養育費等のために働いている。また、「現金日払い」「自由出勤」「経歴・資格不問」という仕事の特徴によって、一般の仕事だけでは生活が苦しい女性、精神疾患や知的障害・発達障害により一般就労が難しい女性など、現行の法制度・福祉制度では十分な支援が届きづらい人々が一定数働いている現状がある。
毎年、風俗業界に流入する女性は増加を続け、風俗情報サイト(シティヘブン)によると、働く女性はコロナ禍前から約6万人増加して44万人を超えた(2023年5月現在)。そのため、需要と供給のバランスが崩れ、価格や過激なサービスで競争せざるを得ない側面も加速する反面で、たとえリスクを冒して参入したとしても、十分な収入が得られないだけでなく、様々なトラブルに見舞われるケースも後を絶たず、日々深刻な相談が舞い込んでいる。
これまでは、悩みが具体化されており、解決を模索する人が風テラスの窓口を検索して相談にたどり着いていたが、SNS広告による情報発信によって、私たちの相談窓口の存在を広く知ってもらうとともに、広告経由でつながった人を対象としたリアルタイムのLINE相談会を提供することで、「自分の困り事は適切な場所に相談できる」という認識と経験が得られると考えている。この相談体験をきっかけに、性風俗の世界に身を置いたとしても、差別や偏見を恐れることなく、適切な福祉につながり、衣食住を確保し、法的な支援を受けることが可能な社会づくりに貢献したい。

事業の総括およびその価値

●SNS広告の出稿によって、これまで見えづらく・つながりづらいとされてきた風俗や個人売春の世界で生きる若年女性たちにリーチし、適切な情報や支援を届けることができる、ということを明らかにできた。


社会の中で不可視化されており、繁華街の夜回りなどの手段を通して偶発的にしかリーチできないと考えられていた風俗や個人売春の世界で生きる若年女性たちに、SNS広告を通した合理的かつ計画的なアプローチを通して、適切な情報や、彼女たちが必要としている福祉的・法律的支援を届けることができる、という事実を明らかにしたことは、本事業の最大の成果である。


副次的な成果としては、これまでの風テラスでは十分にリーチできなかった10代~20代前半の層(パパ活・水商売・コンカフェなどの領域で働く若年女性)にリーチできるようになったことが挙げられる。

課題設定、事業設計に関する振返り

●【課題設定の振り返り】悩みが具体化されていない層にSNS広告を通して「困りごとは相談できる」という認識を広める、という課題設定だったが、実際は個別具体的な悩みへの解決策を求める相談者が大半であった。「困りごとは相談できる」に加えて「相談すれば解決できる」という認識を得てもらうための体制づくりも行う必要がある。


●【事業設計の振り返り】当初は広告からLINE公式に登録した女性を直接通話での相談会につなぐ形式を想定していたが、事前にチャットでの聞き取りや共感的傾聴などを行わないとうまくつながらないことが判明した。その部分に十分な予算を計上していなかったため、事業責任者や相談員が他の業務と兼務しながら対応する形になったことが反省点である。7か月の短期事業であり、本事業に合わせたスタッフ増員も行わなかったため、本事業に関わったメンバー全体に大きな負荷がかかってしまったことも反省点である。

今回の事業実施で達成される状態

短期アウトカム

1相談日時を絞って人員を配置し、リアルタイムにLINE相談やLINE通話につながる枠組みを導入することで、相談のタイミングをとらえて集中的により多くの相談者とつながる
指標これまでの相談事業での対応人数・従事時間・キャンセル率と休眠預金事業との比較
目標値・目標状態相談対応数1か月50人 キャンセル率1割
アウトカム:結果<相談対応数> LINE通話   チャット対応      9月 12名    0名 10月  27名  188名 11月 34名   242名 12月 37名   229名 1月  37名  314名 2月  42名   339名 合計 189名  1,312名 <キャンセル率> 当日受付のみのリアルタイム相談会の形式を取ったので、旧来の完全予約制の相談会(キャンセル率5~6割)と比べると、キャンセル自体は大幅に低下した。それでも、毎回1~2名程度、相談希望の連絡後に音信不通になる相談者がいた。毎月8回開催✕1回1.5名✕5ヶ月=60名で、キャンセル率は全体の約31%。目標の10%には届かなかった。
アウトカム:考察相談日時を絞ってリアルタイム相談会を開催すること自体は、突然の出勤・指名やメンタルの不調などで、事前に相談予約することが難しい女性が多い状況の中では、有効な方法であることが確認できた。 日々の業務がリモートワーク中心になっている中で、相談対応後の感想の共有や意見交換などを通して、スタッフ間のコミュニケーションの質量を増やす場としても役に立った。 一方で、弁護士とソーシャルワーカーのチームで対応する必要性が薄い相談(簡単な情報提供や傾聴主体のもの)も多かったので、リアルタイム相談会を行う場合でも、事前の聞き取りや情報提供などのチャット上でのやり取りが欠かせないことが明らかになった。
2リアルタイムにLINE相談やLINE通話につながる枠組みによって「相談をしてよかった」「また相談しよう」という受援経験を得た当事者の相談ハードルが下がり、継続支援などにつながる
指標利用者アンケート 継続相談希望者数
目標値・目標状態「相談してよかった」「また相談したい」6割以上 継続相談者=3割以上
アウトカム:結果●利用者アンケート結果(回答50名) 相談してよかった:話を聴いてもらえて気持ちが変わった 19名 相談してよかった:悩みの解決に近づいた 21名 残念だった:悩みが解決しなかった 6名 残念だった:対応に傷ついた 1名 わからない:覚えていない 3名 ⇒「相談してよかった」の合計が8割 ●事業期間中の継続相談率 継続した回数を平均2回とすると、 継続相談対応回数 638/2 = 319人(継続者数) 319/新規相談者数 868人 = 継続率 約36%
アウトカム:考察利用者アンケートでは、回答者50名中40名(80%)から「相談してよかった」という回答を得ることができた。 もちろん、時間をかけてこうしたアンケートに回答するということは、風テラスに相談したことや相談員の対応・アドバイスに対して満足している人が多いと推測されるので、この結果だけで、現状の相談体制を評価することはできない。 一方で、80%の回答者から「相談してよかった」という回答が得られたこと、そして継続相談の占める割合が約36%に達したことは、短期アウトカムである「受援経験を得た当事者の相談ハードルを下げる」という目標を達成できたと考えている。
3様々なトラブルに巻き込まれるリスクが高いものの、適切な相談窓口の情報を把握していない若年女性の「相談者予備軍」層に「風テラス」という窓口の存在を知ってもらい、必要な際に主要な相談窓口のひとつとして利用してもらう状態
指標休眠預金事業のLINE友だち登録者数 広告再生回数 本体事業の相談者の増加割合 Twitterフォロワー数
目標値・目標状態LINE友だち登録1,000人 広告再生回数・総計40万回 ※従事者数相当 本体事業1割増 Twitter1万フォロワー
アウトカム:結果●LINE友だち登録 1,387人 (2024年1月22日に前倒しで1,000人達成) ●広告インプレッション ⇒成果の数値集計シートに記載 ●本体事業の相談者数  前年比+164%  (2022年2,267名⇒2023年3,716名) ●X(Twitter)フォロワー数  9,498名(2024年2月29日時点)
アウトカム:考察LINEの友だち登録者数1000人・本体事業の相談者数1割増の目標は達成することができた。 広告の出稿に比例して、本体事業の相談者数も大幅に伸びたのは、「広告で知って、後から検索」⇒風テラスの公式サイトや、相談者向けに作成している記事・マンガなどのコンテンツに触れる、という流れで相談に繋がった人が多いことが予想される。 X(Twitter)のフォロワー数は思うように伸びなかったが、事業期間の前半ではフォロワーターゲティングの広告の反響が良かったため、相談者予備軍に「風テラス」という窓口の存在を知ってもらうという目標は一定程度達成できたと感じている。
4相談者が求める支援、解決策などをもとに既存の福祉、法制度の課題について提言をまとめられる
指標利用者アンケート、相談時のやりとり
目標値・目標状態アンケート回収目標 50サンプル 相談事例抽出10サンプル
アウトカム:結果●アンケート LINE公式の登録者774名に配信 ⇒50名が回答 ★【課題①】風俗の世界で、収入減などの不安やトラブルを抱えているが、現金日払いの生活から抜け出せず、昼職に戻れない女性が多い ⇒【提言】セカンドキャリアにつながる支援(確定申告、社会保障の手続き、履歴書作成支援、家計支援など)の拡充 ★【課題②】家賃滞納や強制退去、ネットカフェ暮らしに追い込まれる若年女性が非常に多い一方、住まいの確保に関して、若年女性が利用可能な制度がまだまだ乏しい ⇒【提言】若年女性が経済的・精神的に安心して過ごせる一時的な住まいの確保、及びそれを得るための支援の拡充 ★【課題③】メンタル不調で悩む女性が非常に多い一方で、精神医療の専門職や行政の機関、支援団体が十分にリーチできていない ⇒【提言】夜職女性が精神保健福祉の制度や専門職につながりやすくするための仕組みをつくる 提言の具体的な内容は、今後成果報告書等でまとめて公開する予定。
アウトカム:考察相談データ、広告の反響、利用者アンケート、相談時のやり取りから、相談者の求める支援や解決策は、「お金の困りごと」「お店での困りごと」「こころの悩み」「生活困窮・家賃滞納」の4つに関するものが多かった。 この4つの背景には、「今のお店、あるいは風俗の仕事で思うように稼げないけれども、昼職に戻れない」「安心して住める場所がない(家賃の負担が重い・親に頼れない)」「メンタルの問題で思うように働けない」という3つの課題がよこたわっている。 夜職の女性がぶつかりやすいこの3つの課題に対して、風俗の世界ではたらく若年女性を支援するNPOの立場から、提言をまとめた。

アウトプット

1風俗等で働く若年女性が日常的にアクセスしているSNSの実態や、それらのターゲットに訴求効果が高い広告媒体を調査分析する
指標当該属性にリーチする広告媒体や広告出稿の時間帯などの選定、広告効果が高い媒体の絞り込み
目標値・目標状態Google・Twitter・YouTube・LINE・Instagramの5媒体経由で毎月計200名LINE登録
アウトカム:結果●LINE登録者数・・・合計1,361名 2023年09月 108名(9月17日~30日) 2023年10月 250名 2023年11月 229名 2023年12月 236名 2024年01月 259名 2024年02月 279名 ●広告効果の高い媒体(CPAベース) ①Google ②Yahoo ③X(Twitter) ●相談者への質問「風テラスをどこで知ったか」 1位 Google検索 491件 2位 X(Twitter) 124件 ●曜日・時間帯 Google広告の表示回数・クリック数が最も高くなったのは木曜日 時間帯別のクリック数の上位は、18時・20時
アウトカム:考察「毎月計200名LINE登録」という目標は、事業期間全体を通して達成することができた。 訴求効果の高い媒体(CPAベース)は、①Google ②Yahoo ③X(Twitter)の順番。Instagram広告は反響が悪く、YouTube広告も直接相談につながることは少なかった。 風俗で働く若年女性の間ではX(Twitter)がメインで使われているが、Google広告のパフォーマンスが最も高かった。 これまでリーチしづらいと考えられてきた風俗や個人売春の世界で生きる若年女性たちに、Google広告というスタンダードな方法でリーチできることがわかったのは、大きな発見である。
2風俗等で働く若年女性を対象としたデジタルアウトリーチおよび相談のファーストノックにかかるコストを割り出す
指標広告出稿・管理費、相談人件費
目標値・目標状態LINE登録数 1000人 (1ヶ月200名) CPA=5000円(人) 相談人件費=10000円(30分・受益者1人)
アウトカム:結果<CPA(費用 / CVしたユーザー数)の平均値> ●Google広告 2,008円  ●Yahoo広告 2,795円 ●X(Twitter)広告 5,806円 ●Instagram広告 30,944円 ●YouTube広告 <人件費> ●通話対応 1名あたりの人件費:10,993円 (人件費合計2,077,722円÷189名)
アウトカム:考察CPAについては、GoogleとYahooで目標値を大幅に下回る結果を出すことができた。 X広告については、フォロワーターゲティングで行った。当初の反響は高かったが、時間の経過とともに広告効果が減少。同じターゲットに向けて出し続けると飽和してしまうことがわかった。 InstagramのCPAが悪い理由としては、検索広告やX広告と比較して、対象者へのターゲティングができていないことが考えられる。 相談人件費については、目標値の10,000円を若干上回る結果になった。 一方、通話相談につなぐまでのチャット上でのやりとり=チャット対応の人件費を当初の予算に入れていなかったことは反省点である。
3風俗等で働く若年女性、生活困窮世帯に受け入れられる広告クリエイティブの方向性を明らかにする
指標広告クリエイティブのコンセプト別の反応 スタイル別の反応
目標値・目標状態コンセプト、スタイル別に訴求力の高いクリエイティブを1~2つに絞り込む
アウトカム:結果●訴求力の高いクリエイティブ X(Twitter)  LPへのクリック数 1.画像広告1(滞納・孤立) 2,812 2.画像広告4(ひとり親) 1,933
アウトカム:考察X広告では、「支払いの滞納・孤立」をテーマにした画像広告と「ひとり親」をテーマにした画像広告の訴求力(LPへのクリック数)が高かった。 それ以外では、画像広告「若年の収入証明」(1,424)とカルーセル広告「生活困窮」(1,040)の訴求力が高かった。 マンガのイラストを活用して視覚に訴える形と、現場で働いている若年女性たちが一番不安に感じていること(滞納・孤立・収入証明)をベースにしたクリエイティブが効果的であることが明らかになった。
4リアルタイムで専門家と相談ができるという相談体制を築いた場合、風俗等で働く女性がどのような傾向の相談を寄せるのか把握分析する=「相談予備軍」が抱える課題や悩みを把握し、統計や分析を取ることができる
指標相談内容別、属性別の統計、事例紹介
目標値・目標状態相談者250人分の統計、相談枠内で対応できなかった50人分も分析 相談事例10サンプル
アウトカム:結果<相談内容・上位10項目> 1.お金の困りごと 2.お店での困りごと 3.こころの悩み 4.生活困窮・家賃滞納 5.税金・年金がわからない 6.次の仕事探し・進路 7.ホスト・スカウト 8.誹謗中傷・身バレ 9.男女のトラブル 10. 家族の悩み ⇒詳しい統計データと分析は、後日成果報告書にまとめて公開する予定。
アウトカム:考察上位は「お金の困りごと」「お店での困りごと」「こころの悩み」。それ以外の相談=家賃滞納やホスト、男女トラブルなども、さかのぼれば、これらの要因が原因で発生しているものが多かった。 経済的困窮や、メンタルの不調で昼職では思うように働けない、地元の親から離れて暮らしたい、といった理由で風俗の世界に入ったものの、そこでも思うように稼げず、店舗とのトラブル(店外でお客と会って直接お金をやり取りする直引き行為など)やメンタルの悪化、家賃の滞納などでさらに困窮・孤立してしまう・・・という若年女性の姿が浮かび上がってくる。
5リアルタイムにLINE相談やLINE通話につながる枠組みによって「相談をしてよかった」「また相談しよう」という受援経験を得る
指標利用者アンケート 継続相談希望者数
目標値・目標状態「相談してよかった」「また相談したい」=6割以上 事業期間中の継続相談者=2割以上
アウトカム:結果●利用者アンケート結果(回答50名) 相談してよかった:話を聴いてもらえて気持ちが変わった 19名 相談してよかった:悩みの解決に近づいた 21名 残念だった:悩みが解決しなかった 6名 残念だった:対応に傷ついた 1名 わからない:覚えていない 3名 ⇒「相談してよかった」の合計が8割 ●事業期間中の継続相談率 継続した回数を平均2回とすると、 継続相談対応回数 638/2 = 319人(継続者数) 319/新規相談者数 868人 = 継続率 約36%
アウトカム:考察リアルタイムでの相談会について、利用者アンケートでは「迅速な対応」「しっかり対応してもらえて気持ち的に楽になった」「今後も何かあれば相談してみたい」という声が寄せられた。 リアルタイムでチャットのやり取りを行うこと、弁護士やソーシャルワーカーとのLINE通話につながることが、受援経験を得ることに繋がっていると感じた。事業期間中の継続相談率も、目標値の2割を超える結果(約36%)を出すことができた。 一方で「もう少し返信が早いと助かる」という感想や「年齢制限なく相談に乗ってほしい」といった声も寄せられた。事業終了後も、より多くの人が受援経験を得られるための仕組みづくりを進めていきたい。
6相談者が求める支援、解決策などを把握する
指標利用者アンケート、相談時のやりとり
目標値・目標状態アンケート回収目標 50サンプル 相談事例抽出10サンプル
アウトカム:結果●アンケート LINE公式の登録者774名に配信 ⇒50名が回答 ★【課題①】風俗の世界で、収入減などの不安やトラブルを抱えているが、現金日払いの生活から抜け出せず、昼職に戻れない女性が多い ⇒【提言】セカンドキャリアにつながる支援(確定申告、社会保障の手続き、履歴書作成支援、家計支援など)の拡充 ★【課題②】家賃滞納や強制退去、ネットカフェ暮らしに追い込まれる若年女性が非常に多い一方、住まいの確保に関して、若年女性が利用可能な制度がまだまだ乏しい ⇒【提言】若年女性が経済的・精神的に安心して過ごせる一時的な住まいの確保、及びそれを得るための支援の拡充 ★【課題③】メンタル不調で悩む女性が非常に多い一方で、精神医療の専門職や行政の機関、支援団体が十分にリーチできていない ⇒【提言】夜職女性が精神保健福祉の制度や専門職につながりやすくするための仕組みをつくる 提言の具体的な内容は、今後成果報告書等でまとめて公開する予定。
アウトカム:考察相談者が求める支援・解決策の中には、法律的・倫理的に実現不可能なものもあるため、相談者のニーズにそのまま応える・相談者の声をそのまま発信するのではなく、相談者がそうしたニーズを持たざるを得ない背景を変えていくための提言を行うことが大切だと感じた。 一方で「直接的な解決には繋がらなかったけれども、話を聞いてくださり、解決に向けて一緒に考えてくださったことがとても嬉しく有り難かったです」という声も寄せられた。 解決策の提言の前に、まずは共感的態度で、批判や評価をせずにきちんと相談者の話を聞くことこそが、最初かつ最大の支援になるケースがある、ということも感じた。

活動

11.風俗の世界で働く若年女性たちが日常的に使用しているSNSへの広告出稿によるアウトリーチ
活動結果計画通り
概要Google広告・Yahoo広告・X(Twitter)広告・Instagram広告・YouTube広告の出稿によって、風俗の世界、及びその近接領域である個人売春(パパ活)や水商売(ガールズバー、ラウンジ、キャバクラなど)で働く若年女性に対して、相談窓口の存在を周知し、事業期間中に合計189名を通話相談、合計1,312名をチャット相談につなげることができた。
22.広告から風テラスにつながった女性たちを弁護士とソーシャルワーカーの相談会につなぎ、彼女たちの社会的孤立・困窮を解消するために必要な福祉的・法的支援を提供する
活動結果計画通り
概要広告経由で連絡のあった相談者に対して、LINEのチャットでの情報提供や不安の傾聴、弁護士とソーシャルワーカーの相談員によるLINE通話相談で対応することを通して、当事者の抱える不安の緩和と課題の整理を行い、必要な法律・福祉制度に関する情報提供や、公的支援や地域の社会資源につなぐサポートを行うことができた。

資金分配団体としての非資金的支援の取り組み総括

1取り組み

想定外のアウトカム、活動、波及効果など

・SNS広告で「風俗」というワードが使用できなかったため、「夜職」というワードをベースにして広告出稿を行ったところ、キャバクラやガールズバー、ラウンジなどの水商売で働く女性たちからの相談が大量に寄せられた。相談内容の大半は「給与の未払い」であった。水商売の世界に足を踏み入れたものの思うように稼げず、そこから風俗に流れていく若年女性は一定数いるので、風俗の仕事に従事する前の段階にいる若年女性にアプローチできる機会、彼女たちが悩んでいる困りごとの内容を知る機会を得られたのは、想定外の成果であった。


・広告出稿に伴い、本体事業の相談件数も大幅に増えた(前年比+164%)。最初に広告で風テラスの存在を知り、後から検索して相談、という流れが多かったと推測される。そう考えると、広告で風テラスの存在を知った後、トラブルに巻き込まれた際に、事後的に「相談したい」と思った人が確実に相談申し込みまでたどり着けるような導線=検索結果に表示される公式サイトやSNS、記事・マンガなどのコンテンツを充実させていくことの大切さを改めて確認することができた。

事業終了時の課題を取り巻く環境や対象者の変化と次の活動

課題を取り巻く変化

事業総括でも記載した通り、社会の中で不可視化されており、風俗店への訪問や繁華街の夜回りなどの特殊な(=誰にでもできるわけではない)方法を使わなければリーチできないと考えられていた風俗や個人売春の世界で生きる若年女性たちが、SNS広告という標準的な(=誰でも実施できる)方法を通して、他の困窮者と同程度、あるいはそれ以下のコストでリーチし、適切な情報提供や福祉的・法律的支援を届けることができる、という事実が明らかになったことは、それ自体が、夜の世界で孤立・困窮している若年女性を支援する上での、極めて大きな「環境の変化」として挙げられるだろう。


リーチできる方法が見つかった後は、それを継続していくための資金(広告費)の確保、及びリーチした後の支援のメニュー拡充(つなぎ先の確保や開拓など)が課題になる。本事業で得られた知見を活かして、広告によるデジタルアウトリーチを継続していくための資金調達、及び全国各地での連携先(行政・生活困窮者自立支援制度・就労移行支援事業所・民間の女性支援団体等)の確保に注力していきたい。

外部との連携実績

1活動認定NPO法人D✕Pのユキサキチャット事業部とNDA(秘密保持契約)を交わした上で、Slackで連携
実施内容食料支援を必要としている相談者の紹介などを実施
結果・成果・影響等風テラスが2023年度内で食料支援を終了するため、食料支援を希望する相談者を引き受けてくださるのは非常に助かっている。

広報実績

シンボルマークの活用状況 あり
内容
メディア掲載(TV・ラジオ・新聞・雑誌・WEB等)なし
広報制作物等あり
内容

1.広告のLP(ランディングページ)を作成


https://lp.futeras.org/


LPの画像
https://drive.google.com/file/d/1CiLP-tStQD4i2NjyfiYVULwnKz-m7XKN/view?usp=sharing


2.YouTube動画広告を作成


●夜職で働く女性の不安に寄り添う相談窓口です/NPO法人風テラス


https://www.youtube.com/watch?v=wfP2d0SuZ7I

報告書等なし
イベント開催等

ガバナンス・コンプライアンス実績

規程類の整備状況

事業期間に整備が求められている規程類の整備は完了しましたか完了
整備が完了した規程類を自団体のwebサイト上で広く一般公開していますか全て公開
変更があった規程類に関して報告しましたか変更があり報告済み
助成金の対象経費に人件費が含まれる場合、当該人件費の水準等を公開をしていますか

ガバナンス・コンプライアンス体制

社員総会、評議会、株主総会、理事会、取締役会などは定款の定める通りに開催されていますかはい
内部通報制度は整備されていますかはい
内容

内部通報(ヘルプライン)規程を作成し、コンプライアンス担当理事がヘルプラインの窓口として通報を受け付ける体制を整備した。

利益相反防止のための自己申告を定期的に行っていますかはい
コンプライアンス委員会またはコンプライアンス責任者を設置していましたかはい
ガバナンス・コンプライアンスの整備や強化施策を検討・実施しましたかはい
内容

ガバナンス・コンプライアンス基本規程を作成し、総会の運営に関する事項、理事会における理事の構成や運営に関する事項等を改めて確認した。それと並行して、法人で働く職員・スタッフの倫理規程、公益性のある法人運営を行うための情報公開規程、個人情報等の漏洩を防止するための文書管理規程、起こり得る可能性のあるトラブルに対応するためのリスクマネジメント規程を整備した。

報告年度の会計監査はどのように実施しましたか(実施予定の場合含む)内部監査
内容

監事による内部監査を行う予定。本事業に関しては、本事業に関わっていない外部の税理士による監査の実施も検討したが、毎月の精算業務に既に税理士が関わっており、READYFORからの精算チェックも毎月受けている状態なので、今回は外部の税理士による外部監査の実施は見送ることにした。

本事業に対して、国や地方公共団体からの補助金・助成金等を申請、または受領していますかいいえ

その他

本助成を通じて組織として強化された事項や新たに認識した課題、今後の対応/あればよいと思う支援や改善を求めたい事項など

今回の助成を通して、組織のガバナンスに関する諸規程や法人内のルールを改めて整備することができた。
今後の認定NPO法人化への挑戦を含めて、法人として公益性の高い活動を行っていく上での礎をつくることができたと感じている。


新たに認識した課題としては、「つながったあと」の課題である。デジタルアウトリーチの手法を活用すれば、これまでつながることの難しかった女性たちとつながることができる。
一方で、「つながった後」に提供可能な支援、利用可能な社会資源、連携先の開拓は、十分とは言えない状況である。
今後は、相談者と「つながった後」に、団体として提供できる支援や選択肢を増やしていくこと、そして必要な社会資源や連携先を開拓していくことにも力を入れていきたい。


改善を求めたい事項については、今回は「7ヶ月」という事業期間の中で一定の成果を出すことができたが、より長期(1~3年間)の助成であれば
さらに大きな結果を出せる手応えはあったので、今後そうした助成が実施される場合は、ぜひ申し込みをしたいと考えている。