シンボル

休眠預金活用事業
情報公開サイト

ホーム検索結果

サムネイル

終了

中間評価報告

2025/03/31更新

評価計画事業進捗の評価事業の改善結果広報に関する報告

評価計画

中間評価の目的:事業中間時点でみえてきた事業上の課題とそれを改善するために中間評価で確認したいこと

事業中間時点でみえてきた事業上の課題

①事業面(生活支援やアフターケア)における課題
・当初は一時的な生活拠点(ぴさら)の次の段階としてステップハウスの設置も検討していたが、現状進めている訪問型のサポートでも一定の成果が得られている。今後の事業展開としてどのような方向性で進めるかについて再度検討する必要が生じている。


➁組織面・体制面における課題
・事業計画時に想定していた人員体制が十分に組めていない(採用が計画通り進まなかったため)ことで、アフターケアの取り組みの一部や、地域の人たちとの協力関係づくりに遅れが生じている。
・働く支援者の人たちがヘルシーに働けているときもあれば、そうでない時もあり、少し波が生じている。

事業上の課題を改善するために中間評価で確認したいこと

・事業計画時の想定通りに進まなかったことや、想定していなかったことが、実際の結果や成果にどのような影響を与えているかについて、関係者の声を拾い上げる。
→良い兆しがあった部分に関して(あるいはうまくいっていない部分に関して)、何がその要因となっていたのか、何が重要だったのかについて明らかにすることで、今後の計画の見直しに生かす。

実施体制

1内部/外部内部
評価担当分野評価設計、評価実施
氏名中島かおり
団体・役職認定NPOピッコラーレ/代表理事
2内部/外部内部
評価担当分野評価設計、評価実施
氏名小野晴香
団体・役職認定NPOピッコラーレ/事務局長
3内部/外部外部
評価担当分野評価設計、評価実施、評価分析
氏名河合将生
団体・役職office musubime
4内部/外部外部
評価担当分野評価設計、評価実施
氏名斎典道
団体・役職NPO法人PIECES/代表理事

実施状況を把握・検証するために実施する調査

調査方法

◆利用者本人
・対象:助成期間開始後利用のあった6名
・項目:ぴさらがあったことでの影響、ぴさらはどんな場所だったか、など
・方法:インタビュー調査(個別)
◆スタッフ
・対象:ぴさらで働くスタッフ
・項目:活動における手ごたえと課題感、利用者や自身の変化・変容、など
・方法:スタッフ全体へのアンケート調査実施後、数名に対してグループインタビューを実施
◆関係機関
・対象:リファー元の行政機関など
・項目:ぴさらに繋がったことでの本人への影響、その機関にとってぴさらがどんな存在だったか、など
・方法:アンケート調査

調査実施時期

2024年11月5日(火)~2024年12月20日(金)

調査結果の検証方法

◆利用者本人
ロジックモデル作成時に設定した調査項目別に、エピソードベースでの分析
◆スタッフ
アンケート結果の単純集計と、エピソードベースでの分析
◆関係機関
アンケート結果の単純集計

事業設計図の検証方法

検証方法

・中間評価の結果を踏まえて、評価アドバイザーを交えて見直しのポイントを確認
・その後、スタッフとの見直しの機会を設定し、全体で議論を実施
※計画時には、スタッフの声が十分に聴けてなかったので、中間評価のタイミングでより多くのメンバーの声を聴くことで「みんなの」事業設計図にしていく

実施時期

2024年12月21日(金)~2025年1月17日(金)

事業計画書や資金計画書への反映実施時期

2025年1月中

事業進捗の評価

アウトプットの実績

1アウトプット活動1:1)妊娠期の居場所づくり ①一時的な住まいの提供 産前・産後、中絶前・後、子どもあり・なしなど、妊娠に関わる多様な女性に対して、数日〜数ヶ月間滞在可能な住まいを提供することで緊急期の居場所を確保する。
指標危機的な妊娠をしている妊婦を安定的に受け入れられる場所(2部屋)と体制の有無
中間評価時の値・状態80%稼働 24時間のスタッフ配置ができてる 事故なく運営ができている
事後評価時の値・状態利用者、支援に携わるスタッフがともに安心を感じる状態で安定的に居場所の運営ができている。
現在の指標の達成状況助成期間を通して100%の稼働をしており、2024年4月から1月17日現在までのステイ利用は6ケースであり、妊婦、新生児及びパートナー合わせて721日の利用となった。またそのすべての期間を通して24時間のスタッフ配置ができた。一方で日勤帯のスタッフ配置が当初の計画であった2名体制を叶えられないことが多く日勤担当スタッフの負荷が高い勤務が続いている。
進捗状況2計画どおり進んでいる
2アウトプット活動1:1)妊娠期の居場所づくり ②妊娠期から出産、産後の女性に対して必要な医療保健的ケアと育児サポート 心理・福祉職によるメンタル面でのケアと社会経済的なケア、医療職による身体的なケアを実施。その他医療機関への検診同行なども行う。
指標心理面談の活用有無。 日々の体調確認、必要に応じて医療機関と連携
中間評価時の値・状態妊娠から産後にかけて必要な医療を受けることができている マイナートラブルへの対処ができている ニーズに応じた心理室の利用ができている
事後評価時の値・状態心身のケアにおいて、必要な時に専門家と繋ぐことができる状態がある
現在の指標の達成状況入所の際に心理室があることを周知徹底した。また利用の心理的ハードルを下げるため面談予約前にリビングで顔合わせをしたり、面談室をあらかじめ見ておくなど事前の準備も行った。それにより全例で心理面談室の利用があり、退所後も継続利用しているケースも4ケースほどある。 医療機関への妊婦健診同行だけでなくニーズに応じて歯科受診のサポートなど実施している。スタッフによるケアだけでなく、本人がセルフケアできるよう自己整体などの利用もあった。
進捗状況2計画どおり進んでいる
3アウトプット活動1: 1)妊娠期の居場所づくり ③HOMEを感じられるような実家機能 過度な干渉やルールが存在しない、利用者が自分らしくいられ、身体的だけでなく心理的安全性が担保される場づくりを行う。
指標スタッフへの対話型ワークショップや研修を実施(年2-3回程度)
中間評価時の値・状態利用者に合わせて必要最低限のルールが設定され、そのルールがあることで利用者自身がぴさらを実家だと感じることができている
事後評価時の値・状態「ぴさら」の場づくりにおいて大事な価値観が理解され、理解に基づいた実践が行われている
現在の指標の達成状況pHOMEの未来を考えるワークショップを2回実施。スタッフのほとんどが参加し、それぞれがぴさらのビジョンを描くことができた。また、利用者に関しては、入所時に確認をしたルールが守れない状況が生じた1ケースについて、その都度話し合いをしながら出産から産後の母子の安全の確保をすることができた。その話し合いがあったことで「また行きたい」と言って卒業後もアフターの利用が続いている。
進捗状況2計画どおり進んでいる
4アウトプット活動1: 1)妊娠期の居場所づくり ④権利擁護を念頭においたソーシャルワークの実施 妊娠に関わる選択(産む・産まない、育てる・育てない)について個人の意見を尊重した意思決定をサポート。本人の選択に伴い意思決定が実現できるような、社会資源への活用をサポートする。
指標スタッフへの対話型ワークショップや研修を実施(年2-3回程度)
中間評価時の値・状態スタッフが妊娠ソーシャルワークについてさまざまな角度やレベルから考えるきっかけとなるような対話型ワークショップを2回実施。ワークショップでの気付きを日常の業務に活かすことができている。
事後評価時の値・状態「ぴさら」の場づくりにおいて大事な価値観が理解され、理解に基づいた実践が行われている
現在の指標の達成状況pHOMEの未来を考えるワークショップを2回実施。また連携先である2団体のスタッフによる研修も実施。ぴさらでの妊娠ソーシャルワークがケースワークとソーシャルアクションから成っていることを確認した。利用者の周りの環境や背景にある課題を見つめるまなざしを持ちながらケースワークをすることでぴさらでの活動はすべて社会変革を目指していることを意識づけする時間を確保した。スタッフ一人一人への浸透にはまだ時間をかける必要がある。
進捗状況2計画どおり進んでいる
5アウトプット活動2: 2)アフターケア ①妊娠期をぴさらで過ごした元利用者が、安心安全に過ごせる居場所の運営 実家のように、数時間〜数日滞在できる居場所(デイケア機能、ステイ機能)の設置。
指標<グループ対応> ひだまり食堂/月1回〜 季節の行事(不定期) <個別対応> ショートステイ対応/月1~4日程度 個別ニーズに合わせたデイ利用受け入れ
中間評価時の値・状態ひだまり食堂や季節の行事について定期開催ができている。 個別対応もニーズに合わせて実施ができている。
事後評価時の値・状態利用者、支援に携わるスタッフがともに安心を感じる状態で安定的に居場所の運営ができている。
現在の指標の達成状況<グループ対応>であるひだまり食堂/月1回〜については参加月齢を設定し、少し枠組みを作ることでスタッフ不足による安全の確保の不安を解消した。季節の行事は予定通り開催した。ひだまり食堂は4回開催、赤ちゃん広場は2回開催 <個別対応>について、ショートステイは2ケースについて延べ58日開催、デイケアはアウトリーチも含めて59回開催した。個別対応はニーズが高いが特にアウトリーチの場合時間が終了時間が読めない部分もあり対応するスタッフの確保が課題となっている。
進捗状況2計画どおり進んでいる
6アウトプット活動2: 2)アフターケア ②利用者と共に必要な機能を構築 アフターケア利用者への定期的なヒアリングを実施し、必要な機能を洗い出し・アップデートを行う。
指標アフターケアに関するヒアリングの実施
中間評価時の値・状態日常の支援の中で、利用者の声(ニーズ)を聞き取れている。 ニーズに対してどのような対応が検討できるか、利用者と検討する機会が持てている。
事後評価時の値・状態利用者の声を取り入れた場づくり、支援が実践されてる
現在の指標の達成状況未婚で子育てをしている10代の若者から「既存の子育て広場は参加している母の年齢が高く話が合わない。しかも夫の話をし始めることが多々あり、自分は疎外感を感じるし、参加することで余計に孤独を感じる。」「愚痴を言っていたとしても幸せな話に聞こえるし、自分の話をしてもいいのかなと思ってしまう」という声が聞かれる。未婚で子育て中の若者のためのデイケアのような居場所のニーズがあり、2025年度は彼らと一緒にそういった集まりを計画立案予定。
進捗状況3計画より遅れている
7アウトプット活動2: 2)アフターケア ⑤就労準備としての、地域ネットワークを活かした交流拠点設置 →就労イメージを具体的に持てていない利用者も多いため、キャリアコンサルタントなどを招いて行う個別のカウンセリングの実施。 →多様なロールモデルと出会えるようにするために、「キャリア」をテーマに地域住民や地元企業などで活躍する社会人を招いて行う交流機会(キャリアをテーマにしたお茶会など)の実施。 →個々のニーズやイメージが持ててきた段階で行う学習支援や就労支援を行う事業者へのリファーや同行支援などの実施。
指標(他団体等との連携による)就学や就労に関する相談対応の有無
中間評価時の値・状態就労関連で協力いただけそうな地域のステークホルダーと繋がる
事後評価時の値・状態就学や就労の希望がある利用者が相談できる体制(他団体との連携を基礎に)がある状態
現在の指標の達成状況実施できていない。シングルマザーズシスターフッドさんの協力を借りて2025年度中に個別カウンセリングやエンパワメントの集まりを実施予定。現在先方と日程調整している。
進捗状況3計画より遅れている
8アウトプット活動3: 3)場を支える地域住民の開拓・人材育成と体制基盤強化 ①団体内運営体制の強化 場づくりの関係者の心理的安全性担保に向けた、対話・ワークショップの定期的な開催(ケースの振り返り、課題・改善点の言語化など)をすることで、運営の担い手にとっても安心できる支援環境を築く。
指標対話型ワークショップの開催(年2-3回程度)
中間評価時の値・状態現場運営に携わっているスタッフと地域住民など一般市民がともに集まって対話するワークショップを1-2回開催できている。
事後評価時の値・状態場を支える人の心理的安全性も担保されるマインドセット・関係性・運営体制がある状態
現在の指標の達成状況継続的な実施はできていない。 スタッフの採用が計画通り進まず、現場運営を優先せざるを得なかったため、地元企業や地域住民との関わりを増やす機会については計画通りに進めてくることができなかった。 単発の機会として、11月に開催した設立5周年のイベントでは約130名の参加者とともにぴさらの取組が広がっていった先の地域・社会についてをテーマにした未来語りのワークを協働先PIECESの力を借りて開催し、ひとりひとりがpHOMEの担い手であることを再確認できた。2025年度には本格的に計画を進めていく。
進捗状況3計画より遅れている
9アウトプット活動3: 3)場を支える地域住民の開拓・人材育成と体制基盤強化 ②地域ステークホルダーと連携した運営 地域住民・教育機関・企業・行政等の巻き込みを行うことで、持続可能性のある取り組みへと発展させていく。
指標地域住民・教育機関・行政など様々なステークホルダーと出会い、親睦を深める機会の有無
中間評価時の値・状態スタッフが地域住民・教育機関・企業・行政等、様々なステークホルダーと出会える場所に参加できている。
事後評価時の値・状態地域のステークホルダーと緩やかに繋がれる運営がなされている状態
現在の指標の達成状況実施できていない。地域住民と繋がる機会を別に開催するよりも、来年度の未婚若年母子の居場所作りの担い手として計画立案の最初から参画してもらえるよう声掛けをしていく。その際に協働先であるPIECESの力を借りて対話型ワークショップを開催し、また現場の運営を地域ステイクホルダーと共に実施していく。
進捗状況3計画より遅れている

短期アウトカムにつながりそうな、活動直後にみられた受益者、対象者、関係団体等の変化(言動)があれば記載してください。

<本人の変化に関して>
・利用者A「お母さんとしてできない、何もできない、お母さんやめたいと自分責めをしていたが、スタッフが『体も心も疲れるのは当たり前、完璧じゃなくてもいいんだよ、よく頑張ってるよ』といって労ってくれた、救われた。夜、ゆっくりお茶を飲むという時間が今までなかったら、この時間は一生忘れられないと思う。自分にとって安心できる時間だった。お風呂にもゆっくり入れた。頼っていいんだよという体験ができて、そこから頼ることができるようになった。その体験が、地元の人たち(児の習い事先の人)といい関係が築ける、続けられるようになった。そしてそこから人間関係が広がった」(利用者インタビューより)
・利用者A「当時は何もできてなかった。ぴさらで温かい美味しいご飯がたくさん出てきたことが本当に嬉しかった。ご飯を食べると元気になるから。いつもは児と二人で食べてたから、スタッフや他のステイ者と一緒に食べられるのが幸せだな、と感じた。何よりも、当時一緒にいたステイ者が、本当に自分にも児にも優しかった」(利用者インタビューより)
・利用者B「頼っていいんだよ、という体験ができたことで、子どもを児童相談所に預けた後に良い人間関係が広がった。シングルであることが恥ずかしいこと、と思っている自分がいたけど、色んな人と関わることで恥ずかしいことじゃないと気付けた。自分もこうなりたちと思える人と出会えた(ぴさら代表、子どもの習い事先の先生、ぴさらの心理士)」(利用者インタビューより)
・利用者C:「ぴさらのスタッフのマインドが開かれたもので居心地がよかった。出産、育児に関して『自由であること』が自分には必要だったが、それを提供してくれたのがぴさらだった。母国の家族も身近にいない中、家族不在を感じさせず、まるでぴさらのメンバーが家族のようで、いたれりつくせりの安全な中で出産をむかえられた」(利用者インタビューより)
・利用者D:「人に感謝できるようになった。今まで働く中でこういう感情を持ったことがない。障害を持つ人のこととか身体が大変な人のことを想像したこともなかったけれどよくしてもらったことでこれを誰かに返したいという思いが芽生えた。前から人の役に立ってから死にたいと思っていたけれど、それがさらに強くなった。」(利用者インタビューより)
・関係機関A「1番不安な時期に、身を委ねて良いと感じられる場所で過ごせたことは、子どもへの愛情を育むためにとても必要だったと感じる。パートナーも含めて、どんな形であっても子どもの親として尊重され受け入れてもらえたことは、ずっと福祉から『形』(籍を入れないのか、認知しないのか、養育費は出さないのかなど)について問い詰められていると感じていたご本人にとっては安心で、そういう外圧からのストレスによるパートナーとの衝突や自暴自棄のようなことがない穏やかな時期だった」(関係機関アンケートより)
・関係機関A「お互いの領域でできることを出し合って、困難を抱えた妊産婦へのサポート共にできる存在。安心して紹介、繋ぐことができる団体」(関係機関アンケートより)

短期アウトカムの進捗状況

1アウトカムで捉える変化の主体団体スタッフ
指標①協力先の数 ➁共通イシューがもてる
中間評価時の値・状態「にんしん」に直接的・間接的に取り組む行政、民間のプレイヤーたちとの関係性について、質・量ともにポジティブな変化が生じている ※関係者マップと関係者分析シートの広がり・深まりで確認
事後評価時の値・状態「にんしん」に直接的・間接的に取り組む行政、民間のプレイヤーたちと、日常的な交流やコミュニケーションが生まれている ※関係者マップと関係者分析シートの広がり・深まりで確認
これまでの活動をとおして把握している変化・改善状況・上記と同様に、ケース対応や業務上のコミュニケーションは必要に応じてなされているが、日常的な交流と言うまでには至っていない。一方で、視察・見学などの機会を設けて互いのフィールドに足を運ぶ機会などは少しずつ作り始めており、そういった機会を通じて交流を深めていきたいと考えている。

短期アウトカムの状態の変化・改善に貢献した要因や事例

<本人の変化に関して>
利用者本人へのインタビューと、スタッフへのアンケート&インタビューの結果から、いくつかの要因を見出すことができた。ここでは主に下記2点について取り上げる。


①(スタッフが)「ひとりの人」としてそこにいること
利用者がぴさらへの安心や信頼を寄せる背景の1つには、ぴさらスタッフが「ひとりの人」として評価やジャッジをせずに共に過ごしていることが挙げられる。本人へのインタビューにおいても「ジャッジしないという姿勢は感じていて。何を言っても肯定的で後ろ向きなことを言われなかった。赤ちゃんって生きてるだけですごいということを感じられたし、勇気をもらった。産んで育ててることをすごいことだと思えて自己肯定感が上がったことがありがたかった」あるいは、「お客さんとか借りてる感じはない。ガッツリ家っていうのとも違う。そういう施設っていう感じでもなくて。親戚の家とも違う。第2の家っていう感じ。本当に自分だけの家っていう以外の家」といった語りがあった。ぴさらにいるスタッフは皆何らかの有資格者ではあるが、その専門性や支援者性を大事にしながらも、「家のリビングにいるただのおばさん」(スタッフアンケートより)のような存在であることを意識していることが、利用者にとっての居心地の良さや信頼感に繋がっているといえる。


➁利用者本人の「いま」を大事にする姿勢
利用者の多くは、先の見えない未来やこれからのことについて不安を抱えている。だからこそ、まずは「いま、ここ」にある気持ちや自分自身の存在を大事にしていることもまた、利用者本人にとっての安心につながっている様子がうかがえる。ある利用者は「印象的だったのは季節を感じられること。部屋の中にずっといると外の様子や季節を感じることがないけれど家の中の飾り付けで季節を感じられることがすごく楽しいと思った。一人だけだったら気が付かなかった季節を噛み締められた。一人じゃできなくてそれが楽しかった」と語り、また別の利用者は「何かを見て『可愛いね』って言ったら一緒にいる誰かも共感して『かわいいね』って言ってくれることがすごく嬉しかった」と語っている。スタッフへのインタビューを行う中で、「利用者さんが表出するどんな感情であれ、逃さず臆せず受け止め その場に佇む。それが正解なのかわかりませんが 自分はそう心がけたいと思っています」と話していたスタッフの言葉に象徴されるように、思考のレベルというよりは、表出されるさまざまな感情を一つひとつ受け止める日々の積み重ねによって、安心感がもたらされているといえる。

事前評価時には想定していなかった変化・影響

スタッフへのアンケートやインタビューを進める中で、喜びややりがいについてたくさん語られていた一方で、様々な葛藤も生じていることが明らかになった。たとえば、ぴさらにおいて重視する姿勢の一つである「利用者本人の自己決定を大切にする」については、下記のような吐露があった。


「ぴさらの自己決定権を大事にするというのはとても共感するし、これまで自分で決められなかったのだからこれからは、、、というのもとても大事なことであると頭ではわかっているものの、これまで自分で決めてこれなかったからこそ、ぴさらにきて、突然何でもかんでも自分で決めていいよ、というのは逆に無責任では?と葛藤することはありました」


関わる利用者の数が増え、スタッフの数も増えていくに伴って、スタッフ間での助け合い、頼り合いが大切だと考えこれまで本事業を進めてきた。一方で、認識や価値観が異なる場面も増える中で、単に助け合えるというだけでなく、利用者本人にとって、私たちにとって、どのようなあり方/関わり方がふさわしいのかという視点で、より対話的なコミュニケーションがぴさら内外において求めらているのかもしれないと感じている。葛藤やモヤモヤを簡単に片づけたり手放したりすることなく、葛藤へのレジリエンスのようなものも大事にしながら、今後の実践を重ねていきたいと考えている。

事業進捗の評価

評価の視点自己評価(価値判断)結果
アウトカムが発現するための活動が適切に実施され、アウトプットは想定どおり積み上げられているか

・活動①➁については、概ね目標通りに活動を実施できており、アウトカムの出現にも繋がっている。
・活動③については、11月のイベントによって機運が醸成されており、今後より本格的に着手していく予定である。

アウトカム発現への貢献要因や阻害要因を把握し、事業改善につなげられているか

・利用者本人の変化に関しては、今回の中間評価によって貢献要員や阻害要因についての状況把握を進めることができ、今後継続していくことや改善が必要なポイント等についても明らかにすることができた。この後、評価の担当だけでなく、事業に直接かかわるスタッフへの共有を進め、よりよい実践につなげていきたい。
・実行団体や地域・社会の変化に関しては、それらアウトカムにつなげるためのアクションが、一部計画よりも遅れている。また、阻害要因の把握をはじめとした現状分析についても十分な時間を確保できていないため、今後の課題として取り組んでいく。

組織基盤強化や、事業活動が円滑に進むための環境づくりができているか。また事業終了後を見据え、活動が継続するための取り組みが進んでいるか

スタッフ間での想いの重ね合わせをするためのワークショップ、外部の人も巻き込んだ対外的なイベントを開催することによって、本事業におけるソフト面の環境づくりについては一定進めることができている。一方で、組織規模が大きくなってきたことに伴い、組織全体においての事業の優先順位付けなどについては多々課題もある。今期は、組織基盤強化に特化した助成金も獲得しており、組織基盤強化における現状の課題分析や施策の立案・実行を本格的に進めていく予定である。

事業の改善結果

事業の改善結果

項目内容
事業設計(ロジックモデル)の改善ポイント

大きな変更点はない。上述の通り、団体内や地域の関係機関との間で、単に助け合う/頼り合う関係を構築していくだけでなく、異なる考え・価値観が表出する場面や事柄について、互いを尊重し合いながら対話を重ねられるような関係性をより構築していくことにも取り組んでいきたいと考えている。

事業計画書の改善ポイント

大きな変更点はない。アウトプットの内、「就労準備としての、地域ネットワークを活かした交流拠点設置」「地域ステークホルダーと連携した運営」
「地域住民・教育機関・企業・行政等の巻き込みを行うことで、持続可能性のある取り組みへと発展させていく」の3点については計画より遅れを取っているため、今後の重点課題として取り組んでいきたいと考えている。

その他

活動➁に紐づくアフターケアの取組については、日を追うごとにニーズの大きさを痛感している。利用者本人へのインタビューにおいても、「ぴさら自体が妊娠している人がいる場所、という思いが強くて、妊娠していない自分がいてもいいのか、と今も思う。3歳くらいまでは気軽にこられる場所になったらいいな」という声があるなど、その在り方については試行錯誤を重ねている最中でもある。利用者から発せられた声をすべて自分たちで請け負う必要はないかもしれないが、利用者にとっての安心できるつながり先をすぐに作れるわけではない中で、どこでどのように社会資源を開発・開拓していくのかについて、引き続き試行錯誤を重ねていきたい。

事業で最も重視する指標・変化

引き続き、利用者本人については「妊娠・出産を一人で抱え込まなくていいと思えているか」「安心できる生活拠点を持っているか」という点を重視して事業に取り組む。一方で、これまではそれらをぴさらでの実践を通して実現していくことに取組んできたが、今後はぴさらを一つの拠点としながらも、まちの中・社会の中にそのような場所や人を増やせるような働きかけを行っていくことも私たちの使命であると考えている。その点においては、「これまでに直接的なかかわりのない人たちと、どれだけの接点や関わりしろが持てているか」の指標を重点的な指標として追いかけられるように、団体内外に対して働きかけていきたい。

広報に関する報告

シンボルマークの活用状況

自団体のウェブサイトで表示

報告書に表示

広報

メディア掲載(TV・ラジオ・新聞・雑誌・WEB等)あり
内容
広報制作物等なし
報告書等あり
内容

ピッコラーレ年次報告書(2023年度, 24.9発行):https://piccolare.org/wp-content/uploads/2024/09/240927_picco_AR2023.pdf

イベント開催等(シンポジウム、フォーラム等)あり
内容

・オンラインイベント(2024.9.30)「誰も妊娠に気づかなかった~『にんしんSOS東京』から見えてきた孤立する妊婦をとりまく社会~」
https://piccolare.org/cat-news/2024091202/
・会場イベント(2024.11.17)「誰も一人にしない〜 つながり続けるために あなたとつくる『project HOME』〜」
https://note.com/piccolare/n/nf2066925faa1
https://note.com/piccolare/n/nbfc45f289bb0