事業完了報告
2025/03/24更新
事業概要
事業期間 | 開始日 2024/06/10 | 終了日 2025/02/28 |
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対象地域 | 石川県羽咋郡志賀町石川県鳳珠郡能登町石川県珠洲市 | |
事業対象者 | 〇志賀町・能登町・珠洲市・輪島市・穴水町の住民のうち、避難所への避難者、仮設住宅入居者、自宅療養者等、自己にて通院が困難な者 | |
事業対象者人数 | 志賀町・能登町・珠洲市・輪島市・穴水町、併せて約4000名 | |
事業概要 | 被災により、未だ医療・保健サービスにアクセスできない住民が多い中、住民の受療機会を確保することを目的に、医療機器を搭載した車両(以下、移動診療車〉を患者の居宅近く、または仮設住宅や公民館などに巡回させる。 |
事業の総括およびその価値
「住民の受療機会の担保」、またBCPの観点から「新たな診療提供手段の確立」を目的に、 1)オンライン診療(Doctor to Patient with Nurse)、2)施設DX(オンライン診療の導入)、3)巡回診療の新たなカタチの模索、4)保健分野でのオンライン活用、の4事業を主な内容として推進した。
9月に発災した奥能登豪雨の被災者(輪島市・珠洲市の住民)が七尾市能登島に二次避難されるにあたり、当該事業で推進しているオンライン診療システムや体制を活用し、地元のかかりつけ医を繋ぎ、当該事業により着手された新たなオンライン診療体制・提供手段が、有事にも実効性を持って機能するBCPの策としても有用であることが実証された。
尚、当該事業は、石川県庁の事業として、石川県医療在宅ケア事業団(第三セクター)に委託する形で、地元の医療・ケア事業者により、継続されることとなった。
課題設定、事業設計に関する振返り
被災地を支援する中で、住民、医療・ケア専門職、行政スタッフに丁寧なヒアリングを重ねながら把握した課題であり 、課題設定としても妥当であったと考える。またBCP(事業継続計画)の観点からの取り組みとしては、全国での汎用性もあるモデルの構築ができた、さらに、災害による復旧プロセスで実施をしてきた当該事業であるが、人口減少の地域において平時からの運用も可能であり、フェイズフリーの考え方にも沿った取り組みとなった。 地元行政および医療・ケア専門職の方々との協働事業というスキームで展開、最終的にその必要性から、現地にて継続するスキームが取れたことは、事業設計および出口戦略としてもすぐれていたと評価する。
今回の事業実施で達成される状態
短期アウトカム
1 | 避難所および仮設住宅の住民の受療機会が確保できる | |
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指標 | 移動診療車における診療数 | |
目標値・目標状態 | 10~20件/月 | |
アウトカム:結果 | 計画どおり進んでいる | |
アウトカム:考察 | 慢性疾患で病状の落ち着いている且つ通院が困難な外来患者を中心に、20-40件/月のオンライン診療を仮設住宅の集会所または患家等で実施した。それ以外にも、施設でのオンライン診療、巡回診療におけるオンライン診療なども行っている。 | |
2 | 受診控えや通院困難による治療離脱がない | |
指標 | 受診控えしている住民の数 通院困難による治療離脱の住民の数 | |
目標値・目標状態 | 0人 | |
アウトカム:結果 | 計画どおり進んでいる | |
アウトカム:考察 | 当該事業がスタートした7月の段階では受診控えをしていた住民は、3割ほどいたが、2月時点では数パーセントであり、且つ、その方々は病状が落ち着いているという理由で受療機会が減っていた。 |
アウトプット
1 | 志賀町・能登町・珠洲市・輪島市・穴水 町の医療インフラが整い。住民のプライマリケア受療機会が担保されている | |
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指標 | ・志賀町・能登町・珠洲市・輪島市・穴水町の住民の受診件数 ・救急搬送数 | |
目標値・目標状態 | 受診件数の大幅な減少がない 救急搬送数の大幅な増加がない | |
アウトカム:結果 | 計画どおり進んでいる | |
アウトカム:考察 | 減少した人口を鑑みると、当該事業のオンライン診療数を含めると地元医療機関における受診件数の大幅な減少は見られない。 また救急搬送数の大幅な増加もない。 | |
2 | 志賀町で提供される医療の質が担保されている | |
指標 | 【量的評価】 住民からの志賀町の医療の質の評価(患者EX) Japanese version of Primary Care Assessment Tool(JPCAT) ※Aoki T, Inoue M, Nakayama T. Development and Validation of the Japanese version of Primary Care Assessment Tool. Family Practice. 2016;33(1):112-7. | |
目標値・目標状態 | 住民からの評価の向上 | |
アウトカム:結果 | 計画どおり進んでいる | |
アウトカム:考察 | いわゆるDoctor to Patientのオンライン診療においては、患者が高齢の場合、特にデバイスの操作や通信環境の担保の 面がボトルネックになる。しかし当該事業で実施したDoctor to Patient with Nurse(D to P with N)のオンライン診療形式では、患者の横にいる看護師がデバイスの操作及び通信環境の整備も行うため、この課題は払拭された。また診療の前後で、看護師がしっかりとしたアセスメントや情報収集を行うこと、それをしっかりと医師に伝えること、また診療後に分からなかったことはなかったかのフォローアップなどを行うことで、患者満足度も通常の外来診療以上に高かった。 | |
3 | 志賀町で提供される医療の質が担保されている | |
指標 | 健康関連QOL(EQ-5D) ※chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://euroqol.org/wp-content/uploads/2023/11/EQ-5D-3LUserguide-Japanese-23-07.pdf | |
目標値・目標状態 | 受領控えや治療からの離脱がない 移動診療車における診療に対する満足度が高く、不安がない | |
アウトカム:結果 | 計画どおり進んでいる | |
アウトカム:考察 | 基本的には、対面診療とオンライン診療を交互に受ける形で医療の提供が行われた。受診から離脱した患者は一人もいなかった。D to P with N形式の診療の患者側のメリットは上述の通りだが、医療の質を向上するという点でもこの形式の診療は功を奏した。つまりDoctor to Patient形式では、画像と音声のみの情報しか得られないが、D to P with N出看護師が患者のそばにいることにより、医師の代わりに触診をして、その結果をリアルタイムで伝えたり、また心電図や尿検査等を実施し、その場でデータや結果の共有をすることにより、診療自体の質が上がったと多くの医師が評価している。 |
活動
1 | ‐各医療機関との契約 ‐オンライン診療の受け持ち時間帯などの調整 ‐オンライン診療機関が診療報酬を算定する際の手続き(保険証の確認等含め) ‐リスク発生の対応ヤ責任の所在に関する協定 等 | |
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活動結果 | 計画通り | |
概要 | 厚生労働省及び厚生局及び石川県庁保健福祉部地域医療推進室とも相談しながら、オンライン診療実施にあたり必要な契約を各医療機関と締結し、事業を遂行した。 | |
2 | ‐雇用した看護師への教育・研修(移動診療車内の機器の取り扱いや多機関の医師とのコミュニケーションについて等) ‐志賀町の関係機関への顔繋ぎ等 | |
活動結果 | 計画通り | |
概要 | 雇用した二人の看護師は、入職時に移動診療車内の機器の取り扱い及びオンライン診療に関する研修を実施した。また、その後も定期的な研修および毎週の ミーティングを行い、提供されるケアの質の担保を図った。また、引継ぎをする石川県医療在宅ケア事業団の看護師たちが困らないよう、我々の活動をマニュアルにまとめた。 | |
3 | ‐調査 〇質問紙調査 ‐住民からの志賀町の医療の質の評価 ‐受診控えしている住民の数 ‐通院困難による治療離脱の住民の数 〇インタビュー調査 ‐医療・健康について、受領控えや治療からの離脱がないか等 | |
活動結果 | 計画通り | |
概要 | 7月に志賀町の保健師と協働し、住民悉皆調査をかけた。回収率は60%程度であったが、発災後の被災地の住民の健康や医療に関する実態が分かる非常に貴重なデータとなった。 | |
4 | ‐キックオフ 仮設住宅および避難所における診療からスタート | |
活動結果 | 計画通り | |
概要 | まずは、志賀町の岩田集会所および能登町の岩井戸、城丸という2つの仮設住宅からスタートした。 | |
5 | ‐石川県庁や地元の専門職からの要請あり、志賀町・能登町に加え、珠洲市・輪島市・穴水町に対象エリアを拡大 | |
活動結果 | 計画通り | |
概要 | 志賀町、能登町に加え、珠洲市(高屋)・輪島市・穴水町に対象エリアを拡大し、医療アクセスの悪い地域の集会所または菅家からのオンライン診療を実施した。 | |
6 | ‐石川県庁からの要請あり、能登豪雨災害により浸水した仮設住宅の珠洲市・輪島市住民の二次避難者へのオンライン診療を担当 | |
活動結果 | 計画通り | |
概要 | 石川県庁からの要請あり、能登豪雨災害により浸水した仮設住宅の珠洲市・輪島市住民が七尾市能登島に避難された。七尾市医師会としては。救急医療に関しては七尾の医療機関で診るが、症状の落ち着いた慢性疾患の患者はできる限り地元の珠洲・輪島のかかりつけ医に繋いだほうが良いのではないかということで、DC-CATメンバーがオンライン診療の補助にあたった。 | |
7 | ‐訪問診療・往診患者への移動診療車活用のトライアルスタート | |
活動結果 | 計画通り | |
概要 | 診療報酬上、在宅医療総合管理料(月2回の診療が必須)を算定している医師において、2回のうち1回をオンライン診療で実施する試みをスタートした。 ‐福祉施設におけるオンライン診療実施 福祉施設において、定期診療(対面とオンライン診療を交互に実施)および往診時のオンライン活用をスタートした。導入した施設は、6市町で、25カ所になった(全施設数の約半数)。 | |
8 | ‐オンライン診療において、医師ー患者間に介在する看護師の役割に関する、地元の訪問看護ステーションへのタスク移譲スタート | |
活動結果 | 計画通り | |
概要 | 年明け1月から、訪問看護ステーションの看護師との帯同をスタートした。また輪島病院は、自院の訪問看護を持っており、その看護師と共に帯同し、業務の引継ぎを行った。 | |
9 | ‐調査 〇質問紙調査 ‐住民からの志賀町の医療の質の評価 ‐受診控えしている住民の数 ‐通院困難による治療離脱の住民の数 〇インタビュー調査 ‐医療・健康について、受領控えや治療からの離脱がないか等 | |
活動結果 | 計画通り | |
10 | ||
活動結果 | 計画通り | |
概要 | 医療機関の人材不足が続く中、また積雪も多かったため、巡回診療(へき地医療拠点病院の役割の一つ)にもオンライン活用を提案し実装に至った。スタートしたのが年明けだったため、十分な活動及び評価ができないものの、 オンラインの活用は十分可能であり、有益であると評価している。今後、体制など整え、実証していくと地元医療機関の関係者は話されている。 | |
11 | ||
活動結果 | 計画通り | |
概要 | 管理栄養士による栄養指導、リハ職によるフレイル予防体操などをオンラインで、孤立集落の集会所に繋ぐことで、集まった住民が栄養指導を受けたり体操したりして、健康の維持を図り、また住民間の交流が生じた。悉皆調査でも、痩せてきている、足腰が弱ったという回答は多く、こうした住民にとっては、オンラインを活用した保健活動は、その効果のみならず効率化や頻度の担保の面からもメリットが大きかった。 | |
12 | ||
活動結果 | 計画通り | |
概要 | オンライン診療を受診した患者、オンラインを実施した医師、オンライン診療を導入した福祉施設のスタッフ、オンライン服薬指導を実施した薬剤師等、40名にインタビュー調査を行った。 |
資金分配団体としての非資金的支援の取り組み総括
1 | 取り組み |
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想定外のアウトカム、活動、波及効果など
当初は、医療アクセスの悪い地域の住民の受療機会を担保するということで仮設住宅の集会所や患家でスタートした、Doctor to Patient with Nurseのオンライン診療であったが、福祉施設での活用、巡回診療での活用、保健活動への活用と、活用の場所や場面が増えていった。また当初、高額な遠隔診療システムや大型のMaaS車を導入しての実施としてスタートしたが、今後の費用面からの継続性も考慮し、ZOOMの活用、軽自動車の活用などの現場の最前線から提案は、実際やってみて評価するということを繰り返し、能登半島の6市町で継続可能なカタチに収束し、地元機関に引き継ぐことができた。
毎月第4水曜日18:30~19:30に実施したヘルスケアMaaS事業ケースカンファレンスは、8月の初開催の際は12名の参加者であったが、2月の最終回は70名を超える6市町の医療者や職能団体、行政の方々に集まっていただいた。発災前もこうした6市町の医療者が一堂に会し、医療やケアについて話し合う場はなかったとのことで、このケースカンファレンスについても当該事業終了 後も引き継がれることとなった。
事業終了時の課題を取り巻く環境や対象者の変化と次の活動
課題を取り巻く変化 | 当該事業のマネタイズをどうするかという点においては、かなり健闘してきたことであったが、現行法下においての実施のスキームが構築できた。つまり、かかりつけの医師が訪問看護指示書を出すことで(指示内容はオンライン診療の補助)、医師側にはオンライン診療再診料が、看護師は訪問看護費を算定可能になる。厚労省にも交渉に行き、医療保険適用の患者についてはその運用で問題ないことを確認した。一方、介護保険の認定者については、まだ算定についてグレーの部分があるため、その間は、石川県庁健康福祉部地域医療推進課が当該事業の継続事業として、事業化し準備してくれた補助金を充てる形で実施する。また集会所等での実施についても現行法下では算定不可能であるため、県の補助金を当てながら継続しつつ、制度改定の提案をしていく必要がある。 |
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外部との連携実績
1 | 活動 | 厚生労働省、石川県庁、志賀町役場、穴水町役場、能登町役場、輪島市役所、珠洲市役所 |
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実施内容 | 医療政策としての検討、事業化 | |
結果・成果・影響等 | 現行の診療報酬制度を活用しての実施が可能になった一方、介護保険の適用、また集会所等での実施についてはまだ整理すべき事案があることが明確になった。県庁担当課が当該事業の継続事業として補助金を確保してくれたため、これを活用しながら能登半島での取り組みを通じ、制度改正を提案していく。 | |
2 | 活動 | 6市町の医療機関(病院・診療所等) |
実施内容 | オンライン診療の実施 | |
結果・成果・影響等 | Doctor to Patient with Nurseの実践を通して、マニュアルを作成、 質の担保についても検討を重ねてきた。このマニュアルは全国的に汎用性のあるものである。 | |
3 | 活動 | 6市町の福祉機関(介護施設、障がい者施設) |
実施内容 | オンライン診療の導入 | |
結果・成果・影響等 | 福祉施設のオンライン診療に関するノウハ ウの集積ができた。 今後、さらに知見と経験を積み重ねることで能登半島から、 福祉施設のオンライン診療のマニュアルも発刊できると考える。 | |
4 | 活動 | 職能団体(県医師会、県看護協会、県薬剤師会、能登北部医師会等) |
実施内容 | 体制構築 | |
結果・成果・影響等 | 県庁の事業化に向けて、また体制構築について議論を重ねてきた。 石川県医療在宅ケア事業団は、県庁及び県医師会、県看護協会の 第三セクターであり、今後、事業団の動きについても医師会、 看護協会もバックアップしていくとのこと。 |
広報実績
シンボルマークの活用状況 | ||
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メディア掲載(TV・ラジオ・新聞・雑誌・WEB等) | なし | |
広報制作物等 | なし | |
報告書等 | なし | |
イベント開催等 | なし |
ガバナンス・コンプライアンス実績
規程類の整備状況
事業期間に整備が求められている規程類の整備は完了しましたか | 完了 | |
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整備が完了した規程類を自団体のwebサイト上で広く一般公開していますか | 全て公開 | |
内容 | ||
変更があった規程類に関して報告しましたか | 変更はなかった | |
助成金の対象経費に人件費が含まれる場合、当該人件費の水準等を公開をしていますか |
ガバナンス・コンプライアンス体制
社員総会、評議会、株主総会、理事会、取締役会などは定款の定める通りに開催されていますか | はい | |
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内部通報制度は整備されていますか | はい | |
内容 | 内部通報窓口はホームページで公開しており、コンプライアンス担当理事が対応することとしている。 | |
利益相反防止のための自己申告を定期的に行っていますか | はい | |
コンプライアンス委員会またはコンプライアンス責任者を設置していましたか | はい | |
ガバナンス・コンプライアンスの整備や強化施策を検討・実施しましたか | はい | |
内容 | 年に1回実施計画を策定・更新している。 | |
団体の決算書類に対する会計監査はどのように実施しましたか。本事業の最終年度の状況を選択してください(実施予定の場合含む) | 外部監査および内部監査 | |
内容 | 実施予定。他の事業分と合わせて9月に内部監査(理事と経理担当者によるもの)を行い、内部監査の報告書を添えて監事に監査を依頼している | |
本事業に対して、国や地方公共団体からの補助金・助成金等を申請、または受領していますか | いいえ |