事業完了報告
2025/03/14更新
事業概要
事業期間 | 開始日 2024/07/08 | 終了日 2025/02/28 |
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対象地域 | 福岡県福岡市および、久留米市近郊 | |
事業対象者 | 福岡県福岡市(地方中枢都市モデル)と久留米市(地方中核都市モデル)近郊の子育て世帯の親と子ども | |
事業対象者人数 | 福岡市内と久留米市近郊に在住する子育て200世帯 | |
事業概要 | 日本全体で少子高齢化の課題解決のための働き手確保に向けて女性の就労が注目されるなか、子育て世帯では核家族化からくる無償ケア労働(家事・育児・介護等)の負荷が一要因となり、睡眠障害や産後・育児鬱、女性特有の健康課題等々、様々な不調症状を複数かつ長期にわたって抱えており、子育て世帯の身心の健康度が低下し、「健康的な身心で子育てや働くこと」「健康的な暮らしを営むこと」が困難な状況にある。これらに対し福岡県内で核家族化が進む地方中枢都市、中核都市である福岡市と久留米市に在住する子育て世帯(妊娠期含む)を対象に、子育て世帯が身心ともに健康的(課題に対して人と協力して取り組むことができる状態)になることで、主体に必要な情報やサービス(有料・無料不問)につながることができる状態を目的とし、かかりつけナースチャットサポートによる「専門家とつながる」事業、家庭内家事人材の育成による「生活圏内の住民とつながる」事業、データベースの整備による「情報とつながる」事業、生活圏内の企業や行政への啓発による「社会とつながる」事業を行うものとする。そのことにより本事業の受益者だけでなく当該地区の子育て世帯がウェルサポを「かかりつけナース」として認知し、一人で不安不調を抱え込むことなく、安心して健康的な暮らしを営むことができると考える。また、これまでの知見を考慮し、事業内で十分な効果を得るためにポピュレーションアプローチ(多くの人々が少しずつリスクを軽減することで、集団全体としては多大な恩恵をもたらす事に注目し、集団全体をよい方向にシフトさせること、健康増進や疾病予防に寄与しうる利点がある)の手法で積極的なアウトリーチ方式で行うものとする。なお、本事業終了後は寄付による自己資金の獲得のほか、行政とともに実施していくことも見据えて、本事業内で通常枠事業採択団体と連携し、その際の課題抽出なども行う予定である。 |
事業の総括およびその価値
ポピュレーションアプローチと積極的なアウトリーチを用い235名への健康支援を実施。特に支援が必要な方(ひとり親、子どもの発達・発育、疾病、登校に課題、親の発達や疾病に課題)が多くユーザーとなった。終了後も支援度が高い当事者が自身や家族の健やかな暮らしを持続可能とするため、相談内容をもとに検索用データベース「フレンドナースの処方箋」を作成。身心不調は暮らしの困り事から始まり疾病につながることから、かかりつけナースの生活習慣改善と同時に支援団体・行政との見守り体制の連携の重要性を感じた。行政サービスでは窓口相談や手続きの困難さ、「A窓口でB窓口を紹介されたがどうしたらよいかわからず行かなかった」との声があり、相談に至るまで、窓口間(支援)をつなぐ役割の必要性を感じた。企業では子育てと仕事の両立が困難な状況が離職リスクを高めており、従業員の生活課題への配慮が企業に求められる課題として明確化した。
課題設定、事業設計に関する振返り
少子高齢化の解決と働き世代の持続的な就労、これ までの実証事業で明らかになった「女性特有の健康課題の常態化による行動変容の困難さ」「家庭内での育児にかかわる家事分担の困難さ」や「収入の多寡、子どもの人数、性別に関わらない子育て世帯の健康度の低さ、相談に至るまでの障壁の大きさ、そのことによる社会からの孤立」といった課題に対応するため、「専門家」「生活圏の住民」「情報・社会」とつながる柱を軸に支援を展開した。ポピュレーションアプローチを活用して積極的なアウトリーチで支援が届きにくい層にもアプローチを行うことで、支援のkeywordとして「核家族」「ひとり親」「子どもの発達発育」「登校」「親の疾患」「貧困」の7つがわかった。行政、企業、支援団体と連携しながら周知と課題抽出を進めた。結果として、行政や企業の協力を得ることで支援の幅が広がり、相談に至れない人々にもアプローチできた。また、意見交換を通じて各機関の課題を共有し、データベースやナビブックの整備により当事者・支援者双方に有益な情報共有が可能となった。
今回の事業実施で達成される状態
短期アウトカム
1 | 【専門家とつながる】 モニターが専門家に身心不調を気軽に相談し、改善に向けて前向きに取り組むことができる | |
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指標 | ・健康に対する取組数 | |
目標値・目標状態 | ・カルテ内取組数25件 ・アンケート内取組数60名 | |
アウトカム:結果 | 計画より進んでいる/計画どおり進んでいる | |
アウトカム:考察 | 登録者235名のうち170名が、ナースと定期的に対話を実施。その中で99名が困りごとを相談し、相談件数は153件に上った。相談(カルテ)内で確認された取組数は123件、アンケート回答で示された取組数は267件(1人平均2.6件)に達した。初期段階から積極的なアウトリーチを実施し、特にLINE電話による面談を活用することでラポールを形成。「相談」という言葉ではなく「日常の気になること」と表現することで対話のハードルを下げ、多忙のなか悩みを共有する時間を確保しにくいユーザーの声を引き出せた。ケースに合った取組を設定し、定期的にフォローアップを行うことで利用者が前向きに改善へ取り組めるよう支援できたと考えている。 | |
2 | 【生活圏内の住民とつながる】 モニターが生活圏内(家族、家族以外)に気軽に頼れる存在がおり、健康を害する無償ケア労働(家事・育児・介護等)負担を軽減できている | |
指標 | ・悩みや身心不調について話せる人の増加 | |
目標値・目標状態 | ・モニター50名が家族や家族以外の日常生活圏内に悩みや身心不調を話せる人が一人以上増えている | |
アウトカム:結果 | 計画より進んでいる/計画どおり進んでいる | |
アウトカム:考察 | モニター50名に対し、2~3名でチームを組みチームで家庭教師を派遣した。家庭教師は「いつも同じ目線でいること」「いつも味方でいること」「いつもと違う状態に気づくこと」を大切にし、チャットだけでは把握しづらい生活環境や健康状態を自宅訪問で確認し、レポートでナースと連携しながら支援を行った。その結果、モニターからは「自宅に来てもらって話し相手になってくれることで気持ちが楽になった」「家事の基本を学ぶことができた」「子どもやパートナーが料理を作ってくれるようになった」といった声が寄せられ、日常生活で気になっていることや身心の不調を気軽に相談し、頼れる存在ができ、無償ケア労働の負担軽減につながったと判断した。 | |
3 | 【情報とつながる】 モニターが無料でいつでも社会資源につな がる(情報を得る)ことができる | |
指標 | ・データーベースの有無 | |
目標値・目標状態 | ・インターネット上で公開している | |
アウトカム:結果 | 計画より進んでいる/計画どおり進んでいる | |
アウトカム:考察 | 事業終了後も支援度の高い当事者が自立して、自身や家族の健やかな暮らしを持続可能とするために、本事業での153件の相談をもとに看護師監修のもと、検索用のデータベース「フレンドナース処方箋」を作成。当事者のみならず行政や企業の支援者など誰でもいつでも悩みや症状に合わせて活用可能なものとしインターネット上で公開をした。また、スマホでみやすいもの、発達課題がある人、健康を害している人はテキストが見ずらいため、レシピを視覚で見れるものお悩みカテゴリ(不調内容)ごとに相談内容(相談者のそのままの相談内容)とカテゴリを表示し検索しやすいようにした。 | |
4 | 【社会とつながる】 福岡市・久留米市内の行政・企業が無償ケア労働(家事・育児・介護等)に対するサポートの必要性を理解している | |
指標 | ・福岡市、久留米市内の行政、企業との意見交換を通じて、家事負担に関する関心を示す発言を引き出せている | |
目標値・目標状態 | ・家事負担に関 する関心を示す発言を3パターン以上引き出せている | |
アウトカム:結果 | 計画より進んでいる/計画どおり進んでいる | |
アウトカム:考察 | 福岡市・久留米市の行政9回、企業11回、議員7回子育て世帯のライフスキルの低下による健康度の低下、子どもの発達・発育、登校の課題、親世代の発達・疾病の課題について意見交換を行った。2月20日には総括イベントを開催。リアル30名、オンライン11名、アーカイブ19名が参加。事業報告と「事業から見えてきた福岡市及び久留米市・近郊地域での子育て世帯のリアルな課題と具体的支援の展望」をテーマに、支援団体、ユーザー、教育関連とトークセッションを行った。参加者アンケートには27名が回答、100%が子育て世帯のリアルな現状と課題に対して理解と関心が高まったとの回答がありサポートの必要性が理解されたと判断した。 |
アウトプット
1 | 【専門家とつながる】 かかりつけナースがモニター(200名)の半数(100名)の不調を把握している | |
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指標 | ・アクティブユーザー(期間内に1回以上利用があったユーザー)数 | |
目標値・目標状態 | ・モニター半数(100名)がアクティブユーザーである | |
アウトカム :結果 | 計画より進んでいる/計画どおり進んでいる | |
アウトカム:考察 | 初期段階より積極的にアウトリーチを試み、中でも初期からLINE電話での面談によるラポール形成とヒヤリングを行った。登録者235名中170名がアクティブユーザーとなり、99名が対話を通して困りごとを相談した。(153件)ヒヤリング内容を「相談」ではなく「日常の気になること」とすることで自身の不調に気づきやすくなったと考えられる。 | |
2 | 【専門家とつながる】 かかりつけナースがアドバイザーと協働でモニターに合ったアドバイスを実施し、生活改善行動を促進している | |
指標 | ・提案数 | |
目標値・目標状態 | ・提案数(症状改善、意思決定、アテンド推進)100件 | |
アウトカム:結果 | 計画より進んでいる/計画どおり進んでいる | |
アウトカム:考察 | ユーザーからの相談に対し153件の提案を実施した。(うちアドバイザーとの協働30件)アドバイザー研修でユーザーの特性等を共有し、特性はもちろんのこと、健康状態や疾患の特徴、ライフスタイルに配慮しながら対話の中で取り組みやすいものや取組の頻度を意思疎通を行いながら丁寧に提案した。 | |
3 | 【 生活圏内の住民とつながる】 生活圏内に悩みや不安を話せる人を増加させる働きかけができている | |
指標 | ・家事家庭教師の派遣回数 ・家事家庭教師による身心不調や悩みなどに関する働きかけ数や観察報告数 | |
目標値・目標状態 | ・家事家庭教師派遣240回 ・働きかけ数または観察数240回 | |
アウトカム:結果 | 計画より進んでいる/計画どおり進んでいる | |
アウトカム:考察 | 家事家庭教師の派遣回数と働きかけ数は計240回であった。担当サポーターは、ユーザーの顔色や声の大きさ・トーン、目線やしぐさの変化を観察し、レポートを提出した。レポートには、ユーザーやその家族の健康状態(睡眠、食欲、疲労)や、ナースの働きかけの必要性が記載されており、必要に応じてナースがサポートを実施した。ユーザーからは、「訪問があることで安心して話せた」「子育てで話し相手がいなかったので助かった」といった声が寄せられた。 | |
4 | 【生活圏内の住民とつながる】 家庭内に家事人材を増やし、無償ケア労働の負担を軽減できている | |
指標 | ・家事人材の育成数 | |
目標値・目標状態 | ・家事人材60人育成 | |
アウトカム:結果 |