事業完了報告
2024/08/27更新
事業概要
| 事業期間 | 開始日 2023/04/01 | 終了日 2024/02/29 |
|---|---|---|
| 対象地域 | 東京都、千葉県、埼玉県、栃木県、愛知県 他 | |
| 事業対象者 | 日本に逃れた難民・避難民の子ども達。本事業ではとくに緊急性の高いアフガニスタンからの難民を主たる対象とする | |
| 事業対象者人数 | 約50人 | |
| 事業概要 | 難民・避難民として日本に逃れた子ども達を対象としてオンライン型と対面型(アウトリーチ型含む)を活用した学習支援事業を実施する。本事業では、来日から間もないアフガニスタンからの退避者を中心に、支援団体が地域とつながりながら教育の伴走支援する。次年度以降、彼らが暮らすそれぞれの地域で、より適切に学習の機会を得られるよう、初期の1年間をブリッジングの期間として位置づけ、必要な支援を行う。 ■① オンラインを利用した日本語と学校教科の学習支援教室 本事業はアフガニスタンからの退避者を主な対象としているが、難民・避難民の子ども達が支援団体の伴走支援により、地域の学校や学習支援の場と有効につながるためのモデル事業として位置づける。 | |
事業の総括およびその価値
本事業の中心は、アフガニスタンから退避を余儀なくされ、2021年来日、2022年秋から栃木県等に居住することとなった小中学生を主たる対象として行われた、学習支援の取組である。オンラインの活用により、来日からまもない小中学生に、週4回の日本語学習の機会が提供できた。途中で学習を中止した子どもは一人もおらず、子ども達全員が「日本語力、学力の向上」を実感している。また、DLA実施、週末の対面教室開設により、子ども達と支援者側の信頼関係が増し、オンライン支援と対面支援を併用した学習支援の有用性が明らかとなった。また、本事業は、難民への理解が乏しい地域において、いかに難民的背景をもつ子ども達やその家族が学校や地域とつながりうるのかを模索した事業でもあった。親とのオンライン上もしくは対面でのやりとりを続け、家族と当団体との信頼関係の構築に注力したことは、事業を牽引する大きな力となった。
課題設定、事業設計に関する振返り
事業設計段階では、「子ども達への学習支援」と「親たちへの相談対応、勉強会 実施」、「地域への働きかけ」を同時進行させていくことでの相乗効果を期待していた。しかしながら、その実施は困難を極めた。オンラインへの参加を恒常化するのに時間を要し、他の取組の実施が遅れた。学習支援の実施にあたっては、親たちの就労、生活の安定が思うように進まないために、結果的に、親が子どものオンライン学習参加について家庭の協力があまり見られなかった。また、対面教室については、最も対象者の多い小山市において、子ども達の移動手段がないため、子ども達の参加が非常に不安定だった。また、地域での支援者の発掘も順調には進まなかった。地域に拠点のない団体にとって地域でのキーパースン探しは時間を要するものであり、支援者としての参加を期待した大学生との連携も双方に負荷のかかる状態であり、改善のための方策を模索している。
今回の事業実施で達成される状態
短期アウトカム
| 1 | 参加する小中学生の日本語力(読み、書き、話す、聞く能力)が向上する | |
|---|---|---|
| 指標 | DLA(外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント)による日本語力の変化 | |
| 目標値・目標状態 | 1年間で2ステージアップした | |
| アウトカム:結果 | DLAの実施は年間1回にとどまったため、目標値の達成は測れていない。 | |
| アウトカム:考察 | 12月から1月にかけて、事業開始当初より学習支援に参加していた22名を対象に、DLAの「読む」「話す」を実施することができた。オンライン上での学習支援時における評価と、DLAの評価には一部乖離が見られ、全てDLAの評価の方が低いものとなっている。この結果は、オンライン支援を中心として学習支援を実施する取り組み全てに大きな示唆を与えるものである。また、DLAを通常支援にあたるものが行ったことにより、子ども達との信頼関係、他の日本語支援者とのチームビルディングが大きく進んだ。この副次的効果も事業実施にあたり、大きく貢献している。 | |
| 2 | 参加する小中学生が学校での授業(とくに算数/数学、英語)がある程度理解できるようになって、学業での達成感が多少感じられるようになり、学業が継続され、進級、進学で きる | |
| 指標 | ①学期終了時の通知表評定 ②参加小中学生へのアンケート調査(母語)による、学習意欲、自己評価の変化 ③支援者アンケート調査による、参加小中学生の学習意欲の変化 | |
| 目標値・目標状態 | ①評定が上がった ②学習意欲、自己評価について、6割の受講者にポジティブな変化が生じた ③参加小中学生の学習意欲について向上を認める記述が6割以上だった | |
| アウトカム:結果 | ①評定不可 ②アンケート回答者10名、うち10名が「学習意欲」「自己評価」の向上を肯定している ③支援者アンケートにおいて、参加小中学生の学習意欲について、子ども達全員(10割)に向上を認めると記している | |
| アウトカム:考察 | 学年終了前の事業終了であるため、通知表の評定は現時点では行えていない。 今回、②のアンケート回答者(子ども)は全て、学習意欲や自己評価の向上を強く肯定していた。(回答者は全て対面教室への参加者である。)③の支援者アンケートで、程度の差はあれ、アンケート回答した全員が、子どもたちの学習意欲の向上を記している。参加は不安定であっても、学習参加を開始した全ての子ども達が一人も学習を中止していない事実に注目している。学習意欲の向上があまり感じられない子ども達は、対面教室への参加がなかなかできない子ども達に偏っており、この相関関係は、より分析が必要な部分である。 | |
| 3 | 参加する小中学生が暮らす地域に、学校以外の学習の場が設けられ、学習が継続できる環境が整う | |
| 指標 | 学習支援の箇所数 | |
| 目標値・目標状態 | 参加小中学生が暮らす地域に1カ所以上の教室が設けられた | |
| アウトカム:結果 | 宇都宮市、小山市、千葉市花見川市に各1カ所当団体運営の教室設置、野田市、三郷市は未設置。 小山市においては、地元の支援教室とも連携 | |
| アウトカム:考察 | 対面教室の開催は困難を極めたが、結果的に3地域に学校以外の学習の場を設けることができた。東京に拠点のある団体にとっては、地域の支援状況の把握、支援団体同士の連携関係、地域で活動できる人材の発掘が大きな課題である。また、人間関係がより密な地方都市等で、難民的背景をもつ子供たちだけを取り出して支援することの是非は、支援団体としても悩ましい課題である。その一方で、オンラインの教室に参加している子どもたちは、それなりの情報共有が進んでおり、「あそこには対面教室があるのに、自分の地域にはない」とストレートに不満を述べており、支援を急がなければならないという思いにも駆られ、理想と現実の間で葛藤が続く。 | |
| 4 | 参加する小中学生の親が母語での教育相談を定期的に受け、1年間の学校の流れや、日本の教育制度をある程度理解できる | |
| 指標 | ①親による教育制度に対する理解度の変化 | |
| 目標値・目標状態 | ① 参加小中学生の親の80%以上が教育制度への理解が増したと回答 | |
| アウトカム:結果 | アンケート回答者8家庭の全て(100%)が「理解を増した」と回答している。 | |
| アウトカム:考察 | 親は1年間の学校の流れや日本の教育制度を理解したと考えている。1年半に及ぶ子育ての経験によるものであろう。また、当団体が実施した勉強会にも6家庭の親は全回参加し、熱心に質問をしていた。しかしながら、その一方で、今回、高校受験を経験した4名(3家族)については、受験事情の理解、手続き、学校選択など、地元の支援団体や難民事業本部委託の支援員、当団体スタッフの伴走支援がなければ、期限までに必要な手続きを終えられたかも疑問である。個別の家庭の経済事情や家庭の事情も関わる進路の話は、在籍校だけでは対応できないことを改めて認識した。 | |
| 5 | 参加する小中学生の親が子どもの教育に関して相談できる先が居住地域に見つかり、自ら連絡が取れる | |
| 指標 | 親が地域で相談に出向いた件数 | |
| 目標値・目標状態 | 対象者の6割以上が地域の相談先に連絡できたと回答 | |
| アウトカム:結果 | アンケート回答者8家庭のうち「地域での相談先を認識している」と回答した家庭は3家庭(37.5%)に留まる。 | |
| アウトカム:考察 | アンケート回答した8家庭のうち、5家庭(62.5%)が、「教育に関して相談できる先を認識している」と回答しているが、「地域での相談先を認識している」と回答した家庭は3家庭(37.5%)に留まり、相談先として当団体をあげる家庭もある。また、実際に相談に出向いたと回答した家庭は3家庭あるものの、うち1家庭は「在籍校に相談に出向いたが、満足できる回答は得られなかった」としている。持続可能な支援、より状況を握した上での支援を考えれば、各家庭が、子どもの在籍校や、地域での相談先を認識し、安心して相談できる状況をつくる必要があり、家庭と在籍校との連結が、喫緊の課題である。 | |
| 6 | 親が日本の教育制度について理解し、子どもの学習に対するイメージが具体化してきた | |
| 指標 | ①親の関わり方の変化 | |
| 目標値・目標状態 | ①80%の支援者、通訳者が、子どもの学習に対する親の関わり方にポジティブな変化が生じたと評価 ②参加小中学生の親の80%が子どもの学習に対してイメージが具体化してきたと回答 | |
| アウトカム:結果 | ①親のかかわり方については、コーディネーター、教室担当者6名にアンケートを行った。「親の関わり方 にポジティブな変化が生じた」という回答は見られなかった。 ②アンケート回答者8家庭の全てが、「イメージが具体化してきた」と回答している。 | |
| アウトカム:考察 | ②については、先の考察に重なることから、①について記す。親の教育への関わり方については、回答した全員から「変化はみられなかった」という回答が寄せられた。もともとポジティブな関りがあった家庭は変わらず関心をもち、そうではない家庭は変わらず関心をもたずという状況と思われる。「親は子どもがオンラインに参加してさえいれば良いと思っているのか、弟や妹が勉強の邪魔をしていても放置している」「親自身が言葉に困難があり、余裕がないので、子どもの教育に関与するという段階にまで至ってないのかもしれない」などのコメントが寄せられており、今後、より具体的に親の教育への関与を促す工夫をしていく必要があるだろう。 | |
| 7 | 参加する小中学生が暮らす地域で、学習支援の活動に参加する支援者が増え、小中学生を取り巻く学習環境が整う | |
| 指標 | ①支援者の数 ②支援者へのアンケート調査による、子どもへの理解度の変化 | |
| 目標値・目標状態 | ①参加する小中学生が暮らす各地域に2名以上の支援者が確保された ②理解が増したという回答が8割以上だった | |
| アウトカム:結果 | s | |
| アウトカム:考察 | 小山については、宇都宮大学の学生団体LINCが協力してくれており、その参加人数は10名をこえる。地元大学生の協力は非常に貴重な連携事例となりうるが、学生団体独自の活動の目的や方向性と、当団体の方針等とのすりあわせは、予想以上に困難であった。学生の自主性を期待するだけでは対面教室はいつまでも確たる方向性をもちえず、その一方で教室担当者を配置している宇都宮、花見川の教室は、学習支援の活動が継続して行われ、参加者の参加状況も安定しており、支援者の確保も進みつつある。当団体としては学生団体との連携は過去にも経験があるが、コロナ禍で学生たちの学生活動への参加ぶりが変化したのではないかと推察する。 | |
アウトプット
| 1 | 参加する小中学生向けに、オンラインを利用した日本語と学校教科の学習支援教室が実施される | |
|---|---|---|
| 指標 | ①学習支援教室の開催実績数 ②参加者数 | |
| 目標値・目標状態 | ①学習支援開催実績週4回(年間176回) ②参加者延べ数8,800人 | |
| アウトプット:結果 | ①学習支援開催実績週4回※後半は受験対策のため週5回(年間150回) ②参加者延べ数2,370人 | |
| アウトプット:考察 | ①学習支援開 催は週に4回、高校受験が近づいてからは教科学習支援の日を1日増やし、週5回の実施となった。年間176回の実施を目標としたが、対象者への周知に一定の期間を要し、支援開始が6月となり、目標数値をやや下回る結果となった。②参加小中学生は2,370人で、目標の8,800人を大きく下回った。50名の参加を目標としていたが、想定外に口コミによる参加者増が見られなかったこと、一部の子どもたちの参加が不安定だったことがその理由としてあげられる。 なお、日本語支援が延べ830クラス、教科支援が延べ338クラス行われた。子どもたちの日本語力や家庭の事情等を考慮し、可能な限り柔軟に対応した結果である。 | |
| 2 | 参加する小中学生向けに、週末の対面教室が実施される | |
| 指標 | ①対面教室の開催実績数 ②対面教室の開催箇所数 ③参加者数 | |
| 目標値・目標状態 | ①対面教室の開催実績週1回(年間40回) ②3カ所 ③参加者延べ数2,000人 | |
| アウトプット:結果 | ②開催個所数3か所 ①③ 宇都宮:14回実施、のべ21名参加 小山:20回実施、のべ68名参加 花見川:8回実施、のべ36名参加 三か所計 全42回開催、のべ125名参加 | |
| アウトプット:考察 | 対面教室の開催個所数は最終的に目標を達成した。しかし、開催実績は、各教室とも、14回、20回、8回と大きく目標の開催回数40回を下回った。また、参加人数も計125名と 目標(2,000人)達成には遠く及ばなかった。想定した参加人数を下回っていることが大きな理由であるが、オンラインでの支援が安定せず、対面教室実施の調整が進められなかったこと、また、支援者人材の発掘に時間を要したことが、その理由としてあげられる。しかしながら、宇都宮、花見川の教室は、開始後は順調に開催が続いており、今後は、まずはオンライン参加者が最も多い小山において、学生団体の力も借りながら、対面教室の安定実施を目指したい。 | |
| 3 | 参加する小中学生向けに、週末のアウトリーチ型学習支援が実施される | |
| 指標 | ①新規アウトリーチ先 ②参加者数 | |
| 目標値・目標状態 | ①2カ所、各所/週1回 ②参加者延べ数80人 | |
| アウトプット:結果 | ①1カ所 ②のべ16人 | |
| アウトプット:考察 | アウトリーチの活動は、千葉市稲毛地域の1カ所1名にとどまった。ニーズ確認後最も早く対面支援が実現した地域であり、6月~12月の間に、参加者1名が16回参加している。オンラインでの学習支援での参加に加え、対面での学習支援の機会もあり、最も順調に支援が進んでいた中学生であったが、12月に突然、千葉県内の他市に引っ越すこととなり、その時点で対面での支援は途絶えてしまった。大家族にとって、住宅の確保は非常に悩ましい問題であり、転居(集合住宅から戸建てへ)を急ぐ気持 ちは理解できるが、参加中学生が対面の学習支援の機会を失ったことは、当団体としては残念でならない。 | |
| 4 | 参加する小中学生の親向けに、定期的な教育相談会が実施される | |
| 指標 | ①オンライン定期相談会の開催実績数 ②定期相談会の参加者数 | |
| 目標値・目標状態 | ①年間44回 ②参加者延べ数176人 | |
| アウトプット:結果 | ①定期相談会ではなかったが、対応回数17回(個別相談対応を除く) ②相談者人数のべ78人 | |
| アウトプット:考察 | 「子どもへのヒアリング」(計5回のべ7人)、「進学説明会」(個別1回1人)、「勉強会」(計5回のべ47人)、「DLA」(計6回のべ7人)等のべ67人、加えて個別相談対応のべ11人、計78人。 相談内容の多くが、教育相談というより、経済面での支援に偏る相談であったことが特徴としてあげられる。かなり個々人の情報を共有する必要があることから、定期相談会の形では実施が難しかった。今後、形式や内容の面での検討が必要である。 | |
| 5 | 参加する小中学生の親向けに、勉強会が実施される | |
| 指標 | ①勉強会の開催実績数 ②勉強会の参加者数 | |
| 目標値・目標状態 | ||

