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事業完了報告

2024/10/21更新

事業概要

事業期間開始日 2023/04/01終了日 2024/02/29
対象地域富山県高岡市を中心とした富山県全域
事業対象者

富山県高岡市を中心とした富山県全域に在住する、学びの継続を求めるCLD青少年(特に学齢期〜10代後半)
富山県高岡市を中心とした富山県全域に在住する、学びの継続を求めるすべての人々(国籍、年代等を問わず)
富山県高岡市周辺在住の地域の課題解決を求める10代後半〜20代のCLD青少年・非CLD青少年

事業対象者人数

直接介入対象者:50名程度
間接的対象者:1000名程度

事業概要

コロナ禍により分断され選択肢が少ない地域のCLD青少年の学びの課題を解決するべく、CLD青少年にとっての学びの継続にどのような障害が存在しているのか、どのような学び方や学ぶ場を求めているのかを質的・量的調査によって明らかにし、具体的にどのような学びの選択肢が地域に必要か・可能かを多様なステークホルダーとともに考える。調査の過程で浮かび上がってきた学びのニーズに応えるため、団体内の学習支援教室の拡大等(例:プレクラスの開設、各種相談窓口の設置、新規属性の受入れ、教室の夜間開催、反転授業の実施、母語教室の実施等)によりパイロット的に学びの場を新たに作る。その実践を通して、様々な選択肢について検証を行い、外国人散在地域の特性を踏まえつつ、地域としてどのような学びの選択肢を公的・私的に提供していけるのか各ステークホルダーと議論し、それを具現化するための礎を築く。当団体は地域におけるインクルージョン社会の実現を目指しており、CLD青少年だけに特化した対応や場を考えるのではなく、CLD青少年を主なターゲットとしつつも、日本人も含めた広い層を対象として調査を行い、地域の実情を踏まえたインクルージョン教育を実現する場の創造や体制整備の提案を目指し、その過程で様々な立場の人々を巻き込み、つながりを作ることによってサポートのネットワークを強化することも調査実施の目的とする。さらに、調査内容の検討や実施は当事者でもある外国ルーツの青少年が中心となって行ない、調査の過程で把握できたニーズへの対応や多様な人々と課題を共有するためのセミナーやワークショップの企画・実施についても、CLD青少年が中心となって方策を考え、実行し、当団体はそのプロセスをサポートしていく。なお、当プロジェクトは、地域の課題を「自分ごと」として捉え、他者とともに考え、解決に向けて行動する「市民性教育」の一環と位置付ける。

事業の総括およびその価値

本調査・提言事業により、CLD青少年を中心とした富山県民の学びのニーズが可視化され、学びにおいて「誰一人取り残さない」富山県となるための道筋や具体的な次のアクションを明らかにすることができた。提言の根拠となる調査においては、CLD青少年だけでなく日本人も含め幅広い年齢層を対象に調査を行うことで、各属性の共通点と相違点を明らかにすることができ、インクルーシブな学びの場を創出するために必要な情報を提供することができた。また、調査対象者を広くとったことで、調査協力を通して、これまでつながりのなかった県内各地の様々なアクターや要支援者とつながることができた。
何より、プロジェクトを通してCLD調査員の成長には目を見張るものがあった。地域課題を的確に捉えると同時に自分自身の理解をも深め、次のアクションへとつなげる主体性を身につけた。調査員からはチームの力を実感したことについての語りもあり、調査員同士の絆も形成されたことが窺えた。散在地域の数少ないロールモデルとなり、これから地域で大きな影響を及ぼしていくことが期待される。

課題設定、事業設計に関する振返り

本事業が進むにつれて、県政が動きを見せていったことから、多様な富山県民の学びのニーズを可視化するという課題設定は的を得ていたと考える。また、可視化する主体が当事者でもあるCLD調査員であり、調査員が調査・提言を通して成長を成し遂げるというプロジェクトの狙いについても、(結果的には)期待通り達成されたと言えよう。ただし、そのプロセスについては、計画の段階で十分に練られていたとは言い難い。まず、事業スケジュールについては、もともと全体的にタイトであったところに、提言書を12月に提出してほしいという思わぬ県からの要望もあり、余裕をもって事業を進めることができなかった。結果としてアンケートの回収数が伸びなかった原因もここにある。次に、調査員の育成についてであるが、調査員は高校生等学生を多く含む構成となったこともあり、初期状態の想定を下回る形で事業をスタートせざるを得なかった。例えば、報連相を徹底するというところから育成を進めなければならない事態を予想していなかったため、後手後手のフォローとなってしまったことは否めない。調査員のニーズ対応による既存の学習支援の変革・拡大が進まなかったのは、初歩段階での人材育成に遅れをとった上にタイトなスケジュールが重なったことがその理由だと思われる。予期せぬ事態も吸収できるような余裕を持った人材育成のプログラム・スケジュールを組むことが、今後の課題である。

今回の事業実施で達成される状態

短期アウトカム

1①CLD青少年のニーズや現在の政策・仕組みについての課題が広く知られるようになり、各種ステークホルダー(教育委員会、学校関係者、国際関係担当課、子ども・福祉担当課、大学、政治家、地域の企業、地域日本語教室、各種NPO等)が学びの機会確保という目標を共有し、実現に向けて協働できるようになる。
指標①調査結果及び提言関連メディアへの掲載数 ②報告会への参加者属性の多様性 ③報告書の内容に対する理解度および意識
目標値・目標状態①メディア掲載数:9以上 ②報告会参加者属性:延べ40属性 ③80%以上の参加者が報告書の内容(学びのニーズ)を深く理解し、学びの機会確保実現のための協働に対し意欲を示す。
アウトカム:結果①6 ②37属性 ③報告書の内容に対する理解度について、5段階評価法で4以上の回答は100%
アウトカム:考察①当団体による提言書の提出や報告会を直接的に報道したメディア掲載数は6と目標値を下回ったが、昨年度まではほとんどメディアで取り上げられることがなかった「夜間中学」「高校入試外国人生徒特別枠」「学びの選択肢」といったワードが地元新聞やTVニュースなどで今年度は非常に多く取り上げられたと感じており、当団体の取り組みが間接的に影響しているのではないかと考えている。②報告会参加者数の属性は37と目標を若干下回ったものの概ね達成されたと考えている。ただし、地元の企業等の参加が見られなかったのは残念であった。「若者の学び」ということで「子どもが学校で学ぶ」というイメージを強く持たれてしまったことがその要因かと思われる。実際には社会人の学び直しも射程に入れていたことがうまく広報できていなかったことが反省点である。③については、調査が県政世論調査を含んだことにより、県庁からの指示で報告書の配布時期を予定より遅くせざるを得なかったため、今回は最終事業報告会での報告内容に対する参加者の理解をアンケートにより測った。その結果、全ての回答者が高い理解度を示した。また、意識についてもアンケートの自由記述には、「ピンときていない人に自分事だと感じてもらうにはどうしたらいのだろう、と私自身悩んでいるのですが、一歩一歩進んでいくのがまずは大切だとあらためて感じました」「行政へ継続的しつこさを以て働きかけていくしかないと思いました」「何か協力できたら」「夜間中学を作りたいですね」と、報告を受けて、学びの機会を創出するアクションにつながるようなコメントが複数見られた。
2②既存の支援システムでは対応できていないCLD青少年の学びのニーズが満たされる。
指標①新たに支援につながった学習者数 ②新規学習者属性の多様性 ③対象者の満足度 ④学習意欲等の変化状況
目標値・目標状態①15名 ②5属性 ③④リッカート尺度5段階評価法で4以上、または、高い満足度や学びを継続しようという意欲を示す言動が見られる(進学を諦めていたが受験にチャレンジした等)
アウトカム:結果①25名(対面21名+オンライン4名) ②9属性 ③2024年2月末から3月頭にかけて実施した2023年度末の学習支援についてのアンケート結果で、5段階評価法で4以上の回答は84.2% ④上記のアンケートでは「勉強がわかるようになったた」73.7%、「勉強が楽しいと思うようになった」52.6%、「勉強は必要だと思うようになった 」52.6%、「自信が持てるようになった」21.1%、「夢や進路のために計画を立てて勉強するようになった」26.3%、「始めたことは、最後までやり抜くために努力するようになった」26.3%、「自分で勉強に必要な時間をきちんと管理するようになった」10.5%、「普段の勉強や、やったことについて振り返るようになった 」36.8%、「普段から学習において目標を立てるようになった」31.6%
アウトカム:考察23年度に新たに支援に繋がった学習者数は想定を大幅に超え(7割増:①)その属性も想定以上に広がった(8割増:②)。近年力を入れてきた市民性教育講座や今年度の調査・提言事業などにより当団体への認知度・信頼度が高まり、市役所(教育委員会含む)や学校をはじめ、各種支援団体等からの紹介で支援につながったケースが多かった。また、調査員からの紹介というケースもあった。新たな属性の学習者のうち、ASD・ADHD、高校浪人生、ダイレクト受験者、大学進学希望者、難民申請者、海外の通信制教育希望者、社会人経験を経てからの専門学校進学希望者は、いずれも日本の中学校や高校に所属しておらず、日本語指導や教科学習サポートはおろか、基本的な進路情報もろくに得られていない状況であったが、CLD調査員の学習支援や伴走サポート(オープンハイスクールや高校への受験相談の付き添い・通訳など)が奏功して、学びを継続させ、一部は実際に受験を突破して進学することができた。このように、地域における既存の支援システムでは対応できていなかったケースに対し、調査員を中心に個々の状況に合った柔軟な対応を行うことで、そのニーズを満たしていった。この経験を積み重ねて新たな支援システムの構築への繋げていくのは今後の課題である。アンケートでも、学習支援の対象者の満足度(③)は高くなっている。対象者の学習意欲等の変化(④)については、自己評価から、学習理解度が大きく高まったことや、学びの楽しさ、必要性を感じるようになったことが見て取れる。一方で、学習の自律性についてはまだ数値が低いことから、学習支援において、対象者の意欲の高まりを自律性に繋げられるようなより一層の工夫が求められる。
3③CLD青少年・非CLD青少年が地域の課題を把握して分析するスキルを身につけ、課題の解決策を主体的に考え、具体的なアクションを起こすようになる。
指標①調査に関わったCLD青少年・非CLD青少年の課題把握や課題解決についての意識 ②支援者としてのCLD青少年・非CLD青少年の学習支援参加状況(月毎の参加率、教室でのふるまい・対応の変化)
目標値・目標状態①CLD青少年が、的確な課題設定の下に調査を実施して客観的データにより仮説を検証し、調査の結果を踏まえて課題の解決策を自ら考え、それを実行に移している。 ②学習支援参加率:80%以上/月(ニーズ把握以降)
アウトカム:結果①ルーブリックの「教育に関する地域の課題を把握できているか」で平均1.6段階UP、「課題解決に必要なスキルを身につけているか」で平均1.0段階UP、「課題の解決策を主体的に考えているか」で平均0.7段階UP ②調査員の学習支援参加回数:対面19回・オンライン11回、ルーブリックの「プロジェクトに主体的に参加しているか」で平均0.9段階UP
アウトカム:考察①調査員(非CLD調査員1名を含む)に行ったルーブリック(全4段階)では、「(1)教育に関する地域の課題を把握できているか」「(2)課題解決に必要なスキルを身につけているか」「(3)課題の解決策を主体的に考えているか」いずれの項目においてもプロジェクト初期と終期を比べて段階平均が上昇している。特に、課題把握での伸びが著しい。1名のみ課題解決のスキルの項目で1段階下がった者もいたが、初期の自己評価が4(最高段階)であったことから、プロジェクトに参加したことで自身を客観的に捉えることができたからではないかと思われ、むしろ成長を示していると考える。2月の事業報告会とその後の反省会では、「いつも、おかしいと思うことがあっても、上の人がなんとかすべきだと、他人任せなことを言うばかりだった自分に気づいた。このプロジェクトを通して、自分にできることは何かを考えるようになった」(パキスタンルーツの調査員)、「今の子どもたちが自分のようにルーツに誇りを持てず隠してしまわなければならない状況を変えていきたいと思う」(フィリピンルーツの調査員)と語られるなど、プロジェクトを通して課題に主体的に取り組み始めている様子が窺えた(抜粋・要約は青木による)。 ②調査員の学習支援への参加回数はあまり大きくは伸びなかったが、ルーブリックの「(4)プロジェクトに主体的に参加しているか」では初期に比べて終期は平均0.9段階上昇していることから、意欲が低かった・下がったことが原因ではなく、学業や仕事と並行してのプロジェクト参加だったために忙しく、学習支援に参加する都合がつかなかったことが主な原因だと考えられる。また、聞き取りによると、学習支援等の参加には家族の車での送り迎えを必要とする調査員も少なくなく(地方の散在地域なこともあって他市在住者が多い)、運転免許のない者も多かったことから(高校生など)、調査員自身だけでなく家族の都合も合わせるのが難しかったという理由も挙げられる。交通手段の問題がある場合は、オンラインでの参加を促したが、オンラインは一対一の指導ということもあって(周囲の補助が入りにくい)参加のハードルが高かったようである。オンライン支援に段階的に馴染んでいけるような仕組みを今後作っていく必要がある。

アウトプット

1①CLD青少年が中心となった体制の下での調査・分析の遂行
指標①調査担当のCLD青少年が主体となり実施する調査検討会議・勉強会等の開催数 ②調査担当のCLD青少年の参加率
目標値・目標状態①10回 ②参加率:80%以上
アウトプット:結果①20回 ②61%
アウトプット:考察調査検討会・勉強会の開催数は目標値の2倍と大きく上回った。調査員が自主的に会を重ねていった結果であり、調査員の積極性・主体性の表れだと考えられる。一方で、各回の調査員の参加率が目標値を下回ったことについては、高校生等が多く、試験や部活などでなかなか時間を合わせることができなかったことが一番の要因であり、意欲の低さによるものだとは考えにくい。ただし一部(全20名中3名)、調査や勉強会から足が遠のいた調査員もいた。それは、調査員が進路選択を迫られる時期にあったことや家庭の事情などにより、精神的・心理的に余裕がなくなってしまったことが原因であり、これに調査をするという新たな挑戦が調査員の想定以上に大変だったために負担に感じたことが加わったのだと考えられる。調査員の負担に伴う精神的・心理的な状況への対応として、調査補助員をフルタイム1名(ブラジルルーツ、事務局員を兼ねる)、パートタイム1名(ブラジルルーツ1名)増員し、データ入力等実務作業を担ってもらった。
2②量的調査の実施
指標アンケート調査票の回収数
目標値・目標状態5000件(回収率50%)
アウトプット:結果3,383件(詳細アンケート:1,393件/調査票配布数12,020部(冊子6020部+GoogleフォームQRコード6000部)・回収率11.6%、県政世論調査:1990件/調査票配布数4,000部・回収率49.8%)
アウトプット:考察結果としてアンケート回収数は5,000件に至らなかった。その原因として、まず(1)量的調査を2つに分けて行うという想定外の事態により、労力が分散せざるを得なかったことが挙げられる。その結果、調査票配布時期もずれ込み、配布開始から回答締め切りまで1ヶ月程度しか期間を確保できなくなった。また、(2)調査員の構成が想定より高校生が多かったことも挙げられる。元々調査票の配布は県内の各団体・組織等を調査員が自らの足を運んでお願いする形を考えており、直接顔を合わせてお願いすることで通常より回収率が高くなる(50%程度)と見込んでいた(参考値として、令和3年の高岡市多文化共生プラン策定のためのアンケート調査(郵送による調査票配布)では、全体の回収率が23.2%であり、特に外国籍市民の回収率は15.6%と低かった)。しかし、調査員に占める高校生の割合が高くなってしまったこと、また学生以外であっても本業の合間にパートタイムとして雇う形がほとんどであったことから、平日昼間に各種団体・組織に足を運べる調査員がほとんどおらず、高校生の場合は部活動や受験勉強などもあって、土日も思うようには調査票配布のための時間を確保できなかった(先方の都合に合わせて動けなかった)ということが結果としてあった。また、社会人経験がない調査員にとっては、自身に馴染みのないところに調査依頼に行くということのハードルが想像以上に高かったようで、調査員数が増えたからといってそのまま単純に比例して依頼数が増えるというわけにはいかなかった。 このような状況ではあったが、できるだけ調査票を配布・回収できるよう、489箇所に協力を仰ぎ、調査票の配布数を10,000部の予定から12,020部に増やした(特にWEB調査票を増刷)。また、各エスニックコミュニティ内での配布について、調査員の家族や知人などの力を借りたり、調査員に馴染みのないところに依頼に行く時は、役員が車出しをし、同行を募る形で各所を回るなどした。
3③質的調査の実施
指標インタビュー調査の実施件数
目標値・目標状態30件
アウトプット:結果13件
アウトプット:考察質的調査のデータ件数については、外部専門家のご指導により、数を確保するよりもピアインタビューで一人ひとりの声を丁寧に拾うことの大切さを勉強会で学んだことから、闇雲に目標データ数を達成しようとするのではなく、各調査員が最低でも1人はインタビューを行い、そのデータにしっかり向き合っていく形に方向を転換した。途中から新しく調査員2名(ロシアルーツ、中国ルーツ)が面談後合流し、2件インタビューデータが増えたものの、結果としてはデータ件数は目標値を下回ることとなった。しかし、一つひとつのデータを勉強会でも取り上げてインタビュアーだけでなく調査員皆で議論するなどしたことにより、表層的ではない、深く掘り下げた分析ができた。
4④調査報告会の実施
指標報告会の実施回数 調査報告会参加者数
目標値・目標状態年2回 延べ80名
アウトプット:結果年2回 延べ76名
アウトプット:考察10月に進捗報告会を、2月に事業最終報告会を実施した。参加者はそれぞれ、42名、34名である。2月の報告会は、計画していた会場を予約できずやや狭い会場となってしまったため、あまり大人数を呼び込むことができなかったが、全体としては概ね目標人数を達成したと考える。 各報告会の参加者は、教育委員会、学校関係者、国際関係担当課、大学関係者、議員、各種地域支援者、エスニックコミュニティ等、当初の狙い通り多様なステークホルダーで構成されており、富山県の教育の課題(特にCLD青少年にとっての「学び」の選択肢のなさ)と危機感を共有し、活発なディスカッションを展開することができた。参加者アンケートには「外国にルーツをもつ方々の生の声を聞くことができて、大変勉強になりました。また、驚くほど様々な立場の方々が集まっていたので、感激しました。いろいろな視点からのお話があって新鮮でした」「日本語を母国語としない人たちがこのようなことができることは賞賛に値しますし、同時に母国語としないからこそできる貴重な調査報告でした」といったコメントが寄せられた。CLD調査員による報告会の実施は、単に調査結果を事実として報告する以上のインパクトを参加者にもたらしたと思われる。また、「各チーム、多様な視点でディスカッションしているのが興味深かった」「 Houve várias discussões que irá contribuir no cenário escolar do Japão(日本の学校場面に寄与するいろんな議論があった)」「情報が外国人にしっかり届いていないこと、親世代の学びが必要なことなど、新しい学びがたくさんありました」「外国にルーツを持つ方達の学習支援には、彼らの親や共に学ぶ同級生、先生方そして行政など様な立場の人々の理解と配慮が不可欠であることを改めて実感した」「彼ら(青木注:調査員)が感じた日本の学校を、これから誰にとっても楽しい学校にするには何が必要かを考えるきっかけになった」といったアンケートの参加者コメントにも見られるように、進捗報告会は多様な参加者によるディスカッションを通した異なる視点との出会いの場となり、調査員にとっては問題を俯瞰し、あるべき「学び」の場を(外国ルーツの自身にとってだけでなく他者も含め)総合的に捉える経験となった。この経験が、その後のデータ分析・考察に影響を与えた結果、場当たり的な対応ではなく、県としての根本的なスタンスを問う10の提言につながっていった。 ただ、多様な参加者があった一方で、報告会には、調査に協力してもらうことで今年度新たにつながった人々(高齢者福祉関係、子ども・子育て関係、雇用関係の各組織・部署等)の参加までは得られなかった。調査協力だけでなく、実際の支援活動等今後具体的に行動を共にしつつ、協働関係を築いていきたい。
5⑤学習支援事業の実施
指標学習支援の実施時間数 学習者数
目標値・目標状態週12時間(うち新規2時間) 40名(新規学習者を含む)
アウトプット:結果週10時間(対面:週6時間、オンライン:週4時間 ※オンデマンド含む) 44名(対面:34名うち新規21名、オンライン支:10名うち新規4名)
アウトプット:考察新規学習者が増え、全体の学習者数は目標値を超えた。一方で、事業による新規学習者増を見越して学習支援実施時間数の増加(調査員によるニーズ対応の時間)を計画していたが、結果としては学習支援を行なっている時間数は増えなかった。理由としては、学習者が増えた分総支援量は増えたものの、調査員が別途時間を取って独自にニーズ対応するには難しい専門的知識(入試対策や入管での面接対策、心のサポート等)を要するケースもあったことなどから、既存の支援者と共に支援を行うことが求められたということがある。また、対応にはスピード感も必要とされる場合も少なくなかったが、それに応じることができる頻度で検討会議を開くことができなかった(調査員の予定を合わせるのが難しかったため)こともあり、結果的に、調査員同士で検討会議でじっくり対応を協議し、それを実行するという形はとることができなかった。今後、学習者増に対応していくにあたっては、既存の支援リソースと新規の支援リソースを組み合わせた形での支援の場・時間の拡大を考える必要がある。
6⑥市民性教育イベントの実施
指標イベントの実施回数 イベント参加者数
目標値・目標状態年4回 延べ100名
アウトプット:結果年5回 延べ143名
アウトプット:考察目標参加者数を達成。アンケート回答より、日頃から様々な人とつながっておくことや異なる文化・習慣・価値観を互いに尊重し共存していく重要性を感じ、様々な背景を持つもの同士が地域をつなぐ大きなイベントであると感じていることから、イベントを通じ共に協働していく大切さが構築されている。また、CLD青少年の中には、異国について興味を持たせてくれたなど肯定的に互いの価値観や文化を知ろうと関心が高まったといったコメントがあった。
7⑦キャリア支援事業の実施
指標キャリア相談件数
目標値・目標状態延べ30件
アウトプット:結果延べ32回
アウトプット:考察目標相談件数を達成。全体的に、日本の中学校や高校につながっていない若者とその保護者からの相談が多かったが、単に進学したいというだけでなく、たとえば日本で医療やファッションビジネスに進むためにはどういったキャリアコースがあるのかといった相談が多かった。当団体には十分に情報の蓄えがあるわけではないため、一緒に調べるという形をとることが多かったが、実際に一緒に専門学校に電話で問い合わせてみたり、見学会や相談会に調査員が随伴したりなど、相談を受け付けるだけでなく寄り添う形で関わっていくことで、2回目・3回目といった発展的な相談に繋がっていった。その他、高校教師や2つの市の教育委員会から、進路指導に関する相談があった。中でも、学齢超過の難民申請者に関する対応については、地域に情報やノウハウがない状況であり、今後は相談窓口で情報を集約し、適宜専門家に繋げられるような体制を整えるべきである。 また、当初は調査員が相談窓口となることで、ピアサポートの役割を果たすことも考えていたが、今年度はやや専門的な相談内容が多く、調査員が対応することが難しかった。今後は相談窓口対応者を複数置き、それぞれの強みを活かして連携できるような体制を構築したい。
8⑧進学説明会の実施
指標説明会の実施回数 説明会の参加者数
目標値・目標状態年2回 80名
アウトプット:結果年3回 86名(高岡会場:30名、富山会場:24名、射水会場:32名)
アウトプット:考察量的調査の結果、外国ルーツ回答者の教育に関する情報の入手元トップ3は「学校の先生から」「家族や親戚から」「インターネット」、希望する情報の入手方法トップ3は「情報をもらう方法やチャンスが増える」「インターネットで検索できる」「学校以外にも相談できる場所がある」であった。そこで、今年度は情報を提供できる場・チャンスを増やすべく、3つの地域(高岡市、射水市、富山市)の会場に分けて参加者が参加しやすいように会場の選択肢を設けた。案内文は県内全ての中学校に案内文を配布して学校の先生から情報を提供してもらえるようにしたり、調査員が各自のエスニックコミュニティで案内文を配布し、家族や親戚を通して情報を得られるようにしたりした。 しかし、昨年度(1箇所1回のみ)に比べ各会場の参加者数はやや少なかった。その要因の一つとして、対象とする生徒が在籍する学校でのニーズ把握ができていないことが考えられる。また、ニーズとして把握していたインターネットの活用は、今回は時間的余裕がなく手が回らなかった。次年度以降の課題としたい。 説明会後の個別相談会では専門的なアドバイスなど得る機会を設けた。アンケートの回答より、「県立学校課や私立高校の担当者に直接質問する機会ができた。進学についてどのような高校があり、県立高校や私立高校の違い、進学にかかける費用など初めて知ることができた」などとコメントがあった。
9⑨調査報告書の配布
指標調査報告書の配布部数
目標値・目標状態300部
アウトプット:結果600部
アウトプット:考察⑩の提言書が広く配布できなかった分、報告書の作成に力を入れた。調査員をはじめ、大学教員、団体スタッフ等で執筆し、当初は50ページ程度を想定していたが、提言書の内容も含み込む形となったこともあり、168ページと3倍以上のボリュームとなった。詳細アンケートの回答に協力してくれた489箇所(県庁、高岡・射水・富山市役所、高校(定時制・私立)、大学、高専、フリースクール、日本語学校、地域日本語教室、地域各種支援団体、派遣会社、児童相談所、社会福祉協議会、公民館、県内小中学校(教職員のみ)、モスク、コンビニ、こども食堂、県内各種イベント会場等)のほか、インタビュー協力者、報告会参加者、県議会議員・市町村議会議員全てに配布予定である。(県政世論調査の結果公表が遅れ、本報告書の配布も予定より遅れている。)
10⑩学びの選択肢に関する提言書の配布
指標提言書の配布部数
目標値・目標状態300部
アウトプット:結果65部
アウトプット:考察提言書は12月に完成し県知事に直接手交したが、マスコミ等に配布する提言書は県政世論調査の内容を除いた形で県に提出するものとは別に作成すること、当該調査結果公表が県よりなされる前に調査結果を当団体で公表しないことについて、県より申し入れがあった。そこで急遽、プロジェクトの概要と提言部分のみを抜粋した形で部数を抑えて提言書(抜粋版)を印刷し、団体内部や調査に協力してくれた議員等にのみ内々で配布するにとどめた。ただし、知事への提言書提出などの報道を見た人々が提言の内容にアクセスできるよう、団体HPで提言書を公開することとした。なお、提言書のダウンロード回数は把握できていないが、提出後2月末時点までのHPの総閲覧数1,901、うち事業関連ページの閲覧数168となっている。

活動

1調査検討会議・勉強会の実施(アウトプット1):調査実施チームで、他県で実施されている教育ニーズ調査について調べ、調査の専門家や他県の調査担当者等を招いて調査内容・方法等について勉強会を行った上で、当プロジェクトで実施する調査の内容や方法について検討する。また、調査結果の分析についても専門家のアドバイスを仰ぐ。拾い上げられたニーズに対応する事業の検討や効果の検証も行う。月1〜2回程度開催。
活動結果ほぼ計画通り
概要5月以降、月2回ペースで勉強会・調査検討会議を実施した。外部専門家を招いて調査員一同での対面での調査検討会議では、調査の方向性を話し合い、インタビューの手法やデータの見方などを学んだ。調査員のみでの勉強会では、富山県の現状について各種資料を読み込んで検討したり、調査データを踏まえて分析・ディスカッションをしたりした。その他、専門家への調査・分析に関する細かい相談は、比較的少人数でzoomミーティングの機会を持った。ただ、事業の過程で把握した「学び」の継続に関するニーズ対応についての検討や検証については、実施の報告(学習支援やオープンハイスクール参加の随伴、高校への入試相談の通訳など)のみにとどまった。
2【量的調査】調査票の作成・翻訳(アウトプット2):調査検討会議を経て決定されたアンケートの内容や調査票の配布範囲・方法に従い調査票を作成し、多言語(ポルトガル語、中国語、タガログ語、英語、ロシア語等)に翻訳の上、印刷し、配布を行う。配布予定数10,000件程度:富山県の潜在的夜間中学入学対象者14,999人の約2/3:未就学者数738人(R2国勢調査)+最終学歴が小学校の者の数12,632人(R2国勢調査)+中学生の不登校者数1389人(R3児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査)+中高生相当年齢で通学していない外国人240人{12-17歳在留数539人(R3在留外国人統計)-中高在籍者数299人(R4学校基本調査)}
活動結果ほぼ計画通り
概要量的調査は、主に以下の3点を明らかにするために、10代から30代の外国ルーツを持つ調査員を中心に、当事者自身がアンケート調査をデザイン・実施・分析を行った。 ① 外国ルーツの方の「学び」に対するニーズ ② ①と同様の「学び」のニーズを持つ人の有無 ③ 外国ルーツの人を取り巻く富山県全体の「学び」の環境 事業開始後に富山県の協力が得られることになったため(「県政世論調査」への掲載)、アンケート調査票は簡易版(県政世論調査)と詳細版の2種類実施することになった。簡易版(県政世論調査)の実施によって、偏りのないサンプルデータを入手できるようになった一方で、県政世論調査に掲載可能な設問数は限られること 、多言語化されておらず、やさしい日本語や漢字へのルビといった配慮もないため、外国にルーツを持つ人をはじめ、読み書きが苦手な県民の声を拾うのは難しいと考えられたことから、別途、当初の計画通りに、アレッセ独自に多言語(やさしい日本語含む)でより多くの情報を得るための「詳細アンケート」を実施することにした。日本語版の他、多言語版を作成、配布した。ただし、簡易版(県勢世論調査)を実施することで、調査票の内容調整に時間を要することになり、調査票の配布時期が予定より遅れ、回収期間は1ヶ月しか確保できなかった。
3【量的調査】調査結果集計・分析(アウトプット2):回収した調査票の集計をコーディネーターや調査員、集計補助員により行い、調査検討会議等で集計結果の分析および考察を行う。
活動結果計画通り
概要外部専門家の指導のもと、回収した調査票の集計をコーディネーターや調査員、集計補助員により行い、調査検討会議等で集計結果の分析および考察を行った。
4【質的調査】インタビュー調査実施訓練(アウトプット3):適切なインタビューが実施できるよう、調査検討会議を経て決定されたインタビュー調査の内容・手法を踏まえてインタビューの方法について組織内のマニュアルを作成し、模擬インタビューなどによる事前訓練を行う。また、パイロット・インタビュー調査を行い、調査設計を微調整するとともに、本インタビュー対象者を絞り込む。
活動結果ほぼ計画通り
概要質的調査に関するインタビュー調査実施訓練は予定通り実施した。4月、5月の調査勉強会を経て、6月3日に専門家の指導のもとで、インタビュー調査実施訓練を実施し、模擬インタビューなどによる事前訓練を行った。その後のパイロット調査は、実施できていない調査員も複数いたが、調査設計の見直しに大きな影響はなかった。
5【質的調査】インタビュー調査実施(アウトプット3):当団体や調査員のネットワーク、また、量的調査の過程で繋がりを持てた外国ルーツ青少年(場合によっては大人も含む)30名にインタビューを行う。必要に応じて通訳を伴う。
活動結果遅延あり
概要質的調査は、量的には多くないかもしれないが、外国ルーツの子どもや青年にとって大事なニーズを拾い上げることが大きなねらいであり、加えて、そのニーズは、お互いのニーズをよりわかる可能性の高いピアによって聞き取られたことによって、その切実さや辛さもともに拾い上げられることを期待している。この後のインタビューの分析にあるように、生の声で拾い上げられる「ニーズ」は、必要性の大きさが語りという形ではっきりと示されている。 一方、調査員の構成として、想定より高校生が多く半分を占めている。進学や家庭の事情で、調査員の心理的な負担が想定以上に大変だった。また、自らインタビュー対象を決め、声がけるなどのことは調査員にとって新たな挑戦となり、負担に感じた様子。一方、外部専門家の指導では、当事者から当事者へのピアインタビューといった研究手法とインタビューによって一人ひとりの声をきちんと拾うことが大事とのことで、そこで、調査員の心理的メンテナンスを優勢にし、調査員がなるべく一回インタビューするように方針転換した。最終的に、調査員13名中12人インタビューを行い、計14のインタビューができた。
6【質的調査】インタビュー結果分析(アウトプット3):録音または録画したインタビューを文字化し、調査検討会議を経て決定された分析方法(SCAT分析等)により分析を行う。分析結果について、調査検討会議で考察する。
活動結果ほぼ計画通り
概要インタビュー件数は最初の目標より下回ったが、インタビューデータを文字化し、調査検討会議を経て決定された分析方法により分析を行うことができた。分析結果について、調査検討会議で考察し、報告書としてまとめることもできた。
7【量的調査】【質的調査】調査結果考察(アウトプット2,3):量・質双方の調査結果を踏まえ、調査検討会議で討議しながら総合的考察を行う。
活動結果計画通り
概要量的調査では、言語の壁だけでなく、いじめや差別に関する語りが多くあった。親子間や教師と生徒間の認識のギャップが引き起こす問題、多言語での情報またはそれを知る方法が乏しいため選択肢が限られているという声が多かった。寛容で柔軟な「多文化”インクルーシブ教育システム」を構築する重要性が示唆されている。一方、量的調査でも多様な文化背景な人と主に学ぶニースが多かった。量・質双方の調査結果を踏まえ、複数回の調査検討会議で討議しながら総合的考察を行い、富山県に「富山型多文化”インクルーシブ教育システムの構築」を中心に、「10の提言」を提出した。
8調査報告会(兼CEP講座)の実施(アウトプット4):多様なステークホルダー(教育委員会、学校関係者、国際関係担当課、子ども・福祉担当課、大学、政治家、地域の企業、地域日本語教室、各種NPO、エスニックコミュニティ等)や調査協力者に対し、調査の進捗状況について報告し、課題を共有するとともに、調査の方向性(軌道の微調整)や調査によって浮かび上がってきたニーズへの対応についてともに考える。
活動結果計画通り
概要10月に進捗報告会、2月に最終事業報告会を実施した。いずれの報告会もただ調査の結果を報告するだけでなく、調査員が調査等を通して気づいたことや感じたことなどを語るコーナーや、参加者とディスカッションするコーナーを設け、CLD青年の成長と可能性をアピールするとともに、多様なステークホルダーと課題を共有して次なるアクションに繋げていくための工夫を行った。なお、これらの報告会は、市民性教育講座を兼ねている(食がテーマ)。
9【ニーズ対応可能な学習支援事業の実施】学習支援教室の拡大実施(アウトプット5):調査によって浮かび上がってきた学びニーズに対し、どのような対応策があるかを話し合い(調査検討会議)、当団体の学習支援教室を拡大する形で実行する。(拡大の内容や方法については、具体的なニーズごとに検討会議で決定する。)
活動結果遅延あり
概要ニーズ対応は、既存の学習支援教室の枠内で既存の支援者とともに行うにとどまり、学習支援教室の拡大実施には至らなかった。調査検討会議におけるニーズ対応についての検討や検証についても、実施の報告のみにとどまった。理由は、上述のとおり、調査員が別途時間を取って独自にニーズ対応するには難しい専門的知識を要するケースもあったことなどから、既存の支援者と共に支援を行うことが求められたということ、高校生やパートタイマーが多くニーズ対応の時間を確保できなかったということがある。
10【ニーズ対応可能な学習支援事業の実施】キャリア支援相談の拡大実施(アウトプット7):調査によって浮かび上がってきた学びニーズを踏まえ、コーディネーターや調査員を中心に相談窓口を設置し、必要に応じて専門家に繋いだり、学習支援教室の拡大に繋いだりする。
活動結果ほぼ計画通り
概要相談内容に専門的知識を要するものも少なくなかったことから、一番最初の窓口は団体役員が担うことになったが、その後の具体的な相談や伴走支援はコーディネーターや調査員が行った(オープンハイスクールへの随伴など)。キャリア支援相談をきっかけに、実際の学習支援へと繋げたり、法律の専門家と繋がったりすることができた。
11【ニーズ対応可能な学習支援事業の実施】進学説明会の実施(アウトプット8):既存の進学説明会の内容や実施形態に加え、調査によって浮かび上がってきた学びニーズに対応するよう、内容や対象範囲、実施場所・形態等を拡大する。実施にあたっては、調査に関わった幅広いステークホルダーと協働する。
活動結果計画通り
概要高校進学説明会では5つの教育委員会、地域に属する3つの団体の協力のもと、県内全中学校を通じて進学説明会の開催を多言語訳付きチラシにて広報するとともに、会員の個々の活動を通じて広報した。従来の対象者は中学2年生と高校進学する中学3年生とその保護者であったが、参加対象を小学6年から中学3年の児童生徒とその保護者とした。既存の申込み方法はとりまとめ校を設置し、参加希望者がいる学校はFAXもしくは電話にてとりまとめ校に申込み、それらを当団体が回収する方法であったが、とりまとめをする学校の負担軽減を図るため、希望者はチラシにあるQRコードより多言語訳付申込フォームにて直接当団体に申込むことができるよう対応した。また、参加者の交通便を考慮し参加しやすい分散型(県内3市)の公共施設会場にて実施した。独自に作成した多言語(日本語、英語、中国語、ポルトガル語、タガログ語、ロシア語)で対応した高校進学支援ガイドブックをもとに、対象者に応じた言語により同時通訳による説明を行った。外国ルーツ青少年も積極的に同時通訳するなど協力した。また、個別相談会を設け、希望者は対面で県立・私立高校の担当職員へ個別のケースに合わせた質問や相談ができるよう対応した。   
12調査報告書の作成(アウトプット9):量的調査・質的調査の結果を踏まえ、地域の学びのニーズについて包括的にまとめた報告書を作成し、県下に広く配布することで、埋もれていた学びのニーズについて、多くの人に知ってもらう。特に、市町村議会や県議会に配布し、次年度以降の公的な「学びの選択肢」創造の議論に繋げていく。
活動結果遅延あり
概要進捗について「遅延あり」としたのは、富山県が県政世論調査の結果を含む本調査書の配布を、県による調査結果公表前には行わないよう、当団体に指示したことによる。
13学びの選択肢に関する提言書の自治体への提出(アウトプット10):調査によって明らかになったニーズと、それに対応するため実施した当団体のパイロット事業の成果の検証結果を踏まえて、具体的な「学びの選択肢」案を自治体に示す。それによって次年度以降の富山県の学びの環境整備のための議論の道筋をつける。
活動結果計画通り
概要調査の結果と勉強会での考察を踏まえ、学びに関する県民のニーズを明示し、10の提言にまとめた。12月28日、調査員8名は県庁に赴き、県知事をはじめ、県教委(県立学校課、小中学校課)、国際課に提言書を提出した。調査員一人ひとりが各提言の内容と当事者としての思いなどを県知事に直接訴えた。 【提言1】多様な学びの選択肢を整備して連続性を持たせ、寛容で柔軟な「富山型“多文化”インクルーシブ教育システム」を構築する 【提言2】多様なニーズに対応できる新しい学びの場をつくる 【提言3】今ある学校を変える −「誰ひとり取り残さない」寛容で自由な学校・多様な個性を活かして他者と共に課題解決する学校へ− 【提言4】多様な個性を持つ教員を増やし、教員の多様な子どもへの理解・資質を向上する制度を整備する 【提言5】生徒の個性を多様な観点から評価して学校に入りやすくする 【提言6】経済格差が学びの格差にならないようにする 【提言7】富山県の組織や企業が多様な個性を尊重し積極的に活かせる環境を整備する 【提言8】情報格差をなくす 【提言9】多様な県民が学び続けるため互いに支え合う地域のコミュニティづくりを進める 【提言10】外国ルーツの当事者の声を教育に反映し、フィードバックする循環型の仕組みをつくる

想定外のアウトカム、活動、波及効果など

 最も大きく、早い段階で現れた想定外のアウトカムは、富山県の動きに関するものである。昨年度までは、長年CLD青少年の教育環境整備や高校入試制度の改善を訴えてきたにも関わらず、県としての動きは非常に鈍く、例えば夜間中学のニーズについても議会で「要望も問い合わせもない」(知事・教育長等)といった答弁が繰り返される等、ニーズを把握しようという動きすら見られない状況であったが、事業開始直後(4月)に県知事に事業説明をさせていただいた際に、調査には県政世論調査を利用して良いこと、提言の内容を次年度の予算案に反映できるよう提言書は12月までには提出してほしいことを県知事から直接伝えられ、知事主導のバックアップを得ることができた。それに引っ張られる形でか、県教委は独自に夜間中学のニーズについて探りはじめ、2月には次年度に県が夜間中学のニーズ調査を実施することを発表した。また、12月に行われた県立高校教育振興検討会議では、外国人生徒に係る特別定員枠の議題が設けられ、特別枠設置の検討も始まっている。
 2点目は、「学ぶ」と「働く」の連続性への気づきと「働く」場すなわち職場・経済界との関係性の構築である。本プロジェクトの調査は「学び」に焦点を当てているが、働く世代や高齢者も対象に「学び直し」のニーズも汲み取っていった。そのことによって結果的に「学ぶ」と「働く」の連続性(ともに自己の成長を求める営みであるという意味で志向されるベクトルは同じであること)やそれぞれの場における課題の共通性(均質的で不寛容な場の問題と評価システムの問題)に気づくことができた。そのことを12月に富山で行われた「共生の未来」シンポジウムで話したことがきっかけで、そこに参加していた富山経済同友会とのつながりができ、課題を共有することができた。今後「学ぶ」と「働く」を有機的に結びつけて活動を展開していくにあたり、その足がかりを得ることができた。
 最後に、非CLD青少年への波及効果である。数としては少ないが、事業報告会では、不登校経験のある非CLD青少年の参加もあった。その母親から、後日「息子自身、未知との遭遇だったようで、同年齢の発表者の子たちの発表を真剣に聞いているようでした。また、このような企画があれば参加したいと帰り話をしていました」というメッセージを受け取ることができた。CLD青少年からの発信は、非CLD青少年の中のマイノリティに響くものがあることを実感した。今後はCLD青少年と非CLD青少年の見えざる結びつきを活かすような活動をしていきたい。

事業終了時の課題を取り巻く環境や対象者の変化と次の活動

課題を取り巻く変化

 Ⅵにも述べたように、富山の教育行政が重い腰を上げつつあるが、本事業の実施がそのきっかけ・促進につながったと自負している。また、本プロジェクトにおける量的調査は、CLD青少年だけでなく広く富山県民全体(13歳以上)を対象に行ったため、調査の協力を依頼するにあたっては、県や市町村の高齢者・障害者を対象とした福祉関連部署や子育て関連部署、雇用関係部署等の協力を仰ぎ、また、これまであまり接触することのなかった分野の各種団体・組織・個人にアプローチを行った。調査依頼・協力を通して様々な社会課題に取り組む県内各地の人々と繋がり、関係が構築されていった。
 CLD調査員については、短期アウトカムの分析でも述べたように、プロジェクトを通して大きな成長が見られた。例えば、「外国ルーツの人は皆同じような悩みを抱えているけれど、実はそれを共有する機会がほとんどない。このプロジェクトはいろんなルーツの人と悩みや疑問を共有し共に考えることができ、視野が広がった」(ブラジルルーツの調査員)、「このプロジェクトを経験する中で、私は進路変更をしたのだが、それは、世の中のいろんなことが繋がっていると感じたからだ。私の目指すこと・やりたいことは変わらないけれど、そこに至る道はいろいろあることに気づいた」(中国ルーツの調査員)、「私は子どもの頃、フィリピンルーツであることを隠してきた。隠すよう親にも言われたし、それが当然だと思ってきた。でも、このプロジェクトを経験して、子どもの頃の私がルーツを隠さざるを得なかった状況に気づき、ものすごく憤りと悲しみを感じた。それに気づかない方が、何も知らない方が幸せだったかもしれない。気づいてしまった今の方が苦しい。でも、気づいてしまったことを後悔はしていないし、今の子どもたちが自分のようにルーツに誇りを持てず隠してしまわなければならない状況を変えていきたいと思う」(一部再掲:フィリピンルーツの調査員)といった語りが見られ、若いCLD青少年のロールモデルとなりつつある。
 今後は、提言の内容を実現するため、本プロジェクトで培った知識と関係を土台にして発展させつつ、CLD青年の人材育成をさらに進めて彼らを中心に据えた形で活動を進めていきたい。

外部との連携実績

1活動量的調査(アンケート)への協力依頼
実施内容アンケート調査票を県内489箇所に配布し、回答された調査票の回収を行った。
結果・成果・影響等調査票の配布を通して関係を構築するとともに、事業の理念に共感してもらえた団体・個人からは新たに配布したら良い団体・個人を紹介してもらえるなど、関係の輪が広がっていった。
2活動進学説明会の実施
実施内容県内3ヶ所(高岡市、富山市、射水市)において、多言語による高校進学説明会・個別相談会を実施。当団体主催、NGOダイバーシティとやま・NPO富山国際学院・トヤマヤポニカとの共催。説明には、富山県教委県立学校課、高岡向陵高等学校の担当者も参加し、それぞれ県立高校・私立高校の入試制度等について説明してもらった。
結果・成果・影響等主催・共催の県内各種団体、県教委、CLD高校生を多く受け入れている私立高校との連携の下、詳細な情報を提供できたとともに、個々のケースの込み入った相談(国籍や在留資格に関する取り扱い等)にもそれぞれの立場で乗ることができた。 案内文の配布は今年度、全県の中学校で行った。配布にあたっては各市町村教委に協力を依頼したことで、説明会だけでなく、支援団体があること自体を各市町村教委に知ってもらうことができた。今後の協力体制構築のための足がかりとなったと考える。
3活動市民性教育講座の開催
実施内容防災ワークショップを高岡市防災アドバイザーの協力の下に行ったほか、食やお茶をテーマとした多文化交流会を各エスニックコミュニティ(特にエスニックレストラン)協力の下、世界の音楽をテーマとしたワークショップ(バックステージツアー)を県内市民団体(スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド実行委員会)の協力の下に行った。
結果・成果・影響等専門家やプロの力を借りて各種ワークショップや交流会を実施できたことで、講座の内容そのものが充実しただけでなく、協働体験を通じてお互いの活動についての理解が深まり、次年度以降の活動展開についてすでに話し合いが始まっている。

広報実績

メディア掲載(TV・ラジオ・新聞・雑誌・WEB等)あり
内容

・2023/4/16 毎日新聞 「アレッセ高岡」理事長 青木由香さん(46)多様性、P223:AJ224受容される社会へ/富山 https://mainichi.jp/articles/20230416/ddl/k16/040/119000c
・2023/5/7 毎日新聞 Nonprofit aims for diverse society, starting with classroom for foreign kids in rural Japan https://mainichi.jp/english/articles/20230506/p2a/00m/0na/010000c
・2023/5/21 中日新聞【とやまの仲間たち】外国ルーツの子 支援 https://www.chunichi.co.jp/article/693654
・2023/6/6 北日本新聞 学べる選択肢増やそう 高岡のNPO、外国ルーツの子支援 https://webun.jp/articles/-/408914
・2023/7/30 北日本新聞 国籍超えた共助を 外国ルーツの子、高岡で災害対応学ぶ https://webun.jp/articles/-/440411
・2023/9/26 北日本新聞 多様な人々に学びの選択肢を 高岡のNPO法人、ニーズ調査 https://webun.jp/articles/-/473503
・2023/10/22 北日本新聞 外国ルーツの子ども支援 アレッセ高岡、県民調査の結果報告 https://webun.jp/articles/-/488625
・2023/11/7 毎日新聞 アレッセ高岡 学びを阻まぬ体制、模索 外国ルーツの子供支援 /富山 https://mainichi.jp/articles/20231107/ddl/k16/100/180000c
・2023/12/29 富山新聞 学びの選択肢で県に提言を提出 アレッセ高岡 https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/1277487
・2024/2/26 北日本新聞 学びの機会確保へ提言 高岡のNPO法人、調査基に意見交換 https://webun.jp/articles/-/557055
・外国人散在地域における多様な学びの選択肢創造プロジェクト 特設ページ開設 https://www.alece.org/manasenproject

広報制作物等あり
内容

・2023/7/29 防災ワークショップ 「第1部 食べてみよう!ハラール非常食」「第2部 知っておこう!災害のこと」災害時ゆえの言葉の壁や文化的、宗教上の問題から互いが知っておくべき大切なことは何かを学ぶ。
・2023/10/21 学びの選択肢創造プロジェクト進捗報告会 午前はプロジェクトの進捗報告。午後は共催の子どもの日本語教育研究会のワークショップ。
・2024/2/25 多様な学びの選択肢創造事業 事業報告会+多文化交流会 県に提出した提言をもとに、これから自分たちに何ができるのか考える。さまざまな国のお茶やお菓子を食べながら、多文化を知る交流会も同時開催。

報告書等あり
内容

報告書600部印刷、広く県民等に学びの選択肢事業を広報するため
https://wixlabs-pdf-dev.appspot.com/assets/pdfjs/web/viewer.html?file=%2Fpdfproxy%3Finstance%3DJJBgUqPrPiWwV6rQ-DBbtioh54dQOdrAalOU4Pn1gM0.eyJpbnN0YW5jZUlkIjoiMzYyYTQ3ODktOWIxYS00ZjIyLWJhOTktYWY1NjhjYTQ2MGZiIiwiYXBwRGVmSWQiOiIxM2VlMTBhMy1lY2I5LTdlZmYtNDI5OC1kMmY5ZjM0YWNmMGQiLCJtZXRhU2l0ZUlkIjoiZjljYTU0Y2ItMjFlZi00YTQwLWE3ZTgtZWVmZTZmNzg2ZmU1Iiwic2lnbkRhdGUiOiIyMDI0LTA5LTI4VDAzOjMxOjU0LjA0NloiLCJkZW1vTW9kZSI6ZmFsc2UsImFpZCI6ImYyMGIwMmY5LTJmNzUtNDNkZC04NjY3LTJiMzhmZDdhMDM0ZiIsImJpVG9rZW4iOiJjZmUwMTM0Mi1iYWY1LTA1NjItMWQ3MS00MWE4ZTNkYzBmMWUiLCJzaXRlT3duZXJJZCI6IjlhMzc1NWM3LTg0NmYtNGVmZC1iOGUyLTZlOTMzNGI2MGU1NSJ9%26compId%3Dcomp-m1ljhbf6%26url%3Dhttps%3A%2F%2Fdocs.wixstatic.com%2Fugd%2F9a3755_a1568b1220fb46c69c4f658996e42e24.pdf&rng=1727494316182#page=1&zoom=page-fit,-282,855&links=false&allowPrinting=false&allowDownload=false&originalFileName=%E6%9C%AA%E6%9D%A5%E5%89%B5%E9%80%A0%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8

ガバナンス・コンプライアンス実績

規程類の整備状況

事業期間に整備が求められている規程類の整備は完了しましたか完了
整備が完了した規程類を自団体のwebサイト上で広く一般公開していますか一部公開
内容

HPで広く一般公開している。公開はしているが、パソコン使用規定などは公開していない。

変更があった規程類に関して報告しましたか変更があり報告済み

ガバナンス・コンプライアンス体制

社員総会、評議会、株主総会、理事会、取締役会などは定款の定める通りに開催されていますかはい
内部通報制度は整備されていますかはい
内容

副理事長岡﨑が、内部通報者の受付窓口となり、適宜外部委員の上市社会保険労務士に連絡して処理する。

利益相反防止のための自己申告を定期的に行っていますかはい
コンプライアンス委員会またはコンプライアンス責任者を設置していましたかはい
ガバナンス・コンプライアンスの整備や強化施策を検討・実施しましたかはい
内容

富山市在住の社会保険労務士・上市真也氏に外部相談員を依頼して、定期的にコンプライアンス会議を実施している。

報告年度の会計監査はどのように実施しましたか(実施予定の場合含む)内部監査
内容

アレッセ高岡の会計年度は、4月1日~3月31日であるため、5月中旬に内部監査を行う予定である。

本事業に対して、国や地方公共団体からの補助金・助成金等を申請、または受領していますかいいえ

その他

本助成を通じて組織として強化された事項や新たに認識した課題、今後の対応/あればよいと思う支援や改善を求めたい事項など

 本助成により、事業遂行に必要なプロジェクトコーディネーターと調査員・調査補助員を雇用することができた。不安定な雇用条件の下働いていたり家庭で求められる役割が大きいCLD青年に中心になって活動してもらうためには、完全な無償ボランティア頼みではプロジェクトを軌道に乗せることも、集中して掘り下げてもらうこともできなかったと考える。組織としては、少なくない人数のCLD青年を雇用したことで慣れない労務管理等大変でもあったが、着実に知識と経験を蓄え、基盤を強化できた。また、雇用するということは、社会人としての人材育成も求められるが、これについては計画段階で弱いところがあったのが大きな反省点である。しかし、その反省から、逆に人材育成に必要なポイントも見えてきた。例えば、報連相など基礎的なスキルの習得は明示的な指導をもって行うこと、仕事の進捗だけでなく仕事を通した各人の成長を可視化すること、共に励まし合い高め合える同僚がいる環境であること、仕事以外のことも含めて相談できるような心理的サポートの場をつくること等である。今後はこれらの反省を踏まえて、綿密な人材育成プランを練り、CLD青年の活躍の場を当団体において作るとともに、当団体の経験を地域に広め、地域社会の様々な場面でCLD青年が活躍できる場を創出していきたい。

シンボルマークの活用状況

進捗報告会や市民性教育講座などのチラシには、シンボルマークを掲載している。休眠預金事業であることは、機会があるたびに説明を行っている。